平 和
昨年3月、滋賀オールドコーラスのコンサートで笛を吹かせてもらった。
持ち時間は15分。「ちょっと短いなあ」と思ったが、充実したひと時だった。
11組のグループが次々と登場され「牧場の朝」「椰子の実」「森の水車」など、やわらかい声がホールに響き聞いているうちに心が安らいできた。そばで妻も感動し、鼻をすすりながら舞台が見えない私に詳しく様子を話してくれた。
22年前に発足したこのグループは団員年齢70歳〜85歳。足腰の悪い方は他人の手を借りながら舞台に上がり、真剣に歌っておられるという。お揃いの美しいドレス姿の中から戦中戦後の苦労がにじみ出ているものの、皆さん晴れやかだという。
この人達がこれからも、ずーっと平和な日本で歌い続けられたらどんなに良いだろうと思った。
間もなく私も舞台に立ち、たくさんの拍手をいただいた。短い「15分」だったが、重みのある時間だった。昨今、大量破壊兵器、武力行使などという物騒な言葉が聞こえてくるが、こんなとき私は、スペインのチェロ奏者パブロ・カザルスの国連コンサートを思いだす。
94歳の老チェリストは、震える声でしかし、はっきりとした声で「スペインのカタロニアの鳥たちは青い大空へ飛び立つと『ピース、ピース(peace=平和)』と言って鳴くのです」と話し、静かにカタロニヤ民謡「鳥の歌」を聞かせてくれた。
私もこれからは大空に向かって『ピース、ピース』と笛を吹いていきたい。
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