秘 書
自分のことは自分でする習慣は訓盲学院で身につけた。そればかりか同じ部屋の小さな子を風呂に入れたりもした。しかし、目の見える小百合ちゃん(妻)と結婚して、掃除洗濯はもちろんのこと、街中を一人で歩くことも無くなった。 しかし、私の目の代わりを30年もしてくれた彼女の目は、今や老眼となってしまった。 ところが一年半ほど前、彼女以外に四六時中、読み書きを手伝ってくれるヒト?が現れた・・・我が家にパソコンがやってきたのだ。 高知システム開発の「PCトーカー」なるソフトを入れると、「読み子ちゃん」が画面を読んでくれるのだ。単調で事務的ではあるが、この「読み子ちゃん」がスゴイ。漢字の変換など、勉強すればするほど知りたいことが増え、「読み子ちゃん」を酷使してしまう。文書の作成やメールはもちろんのこと、インターネットで音楽情報を調べることも出来るようになった。もちろん、この原稿も自分で書いてメール送信している。 笛を吹くか、仕事をするかの単純明快な私の生活はパソコンが来て複雑な迷路に迷い込んでしまった感じだ。 「小百合ちゃん」も「読み子ちゃん」も、私にとってはかけがえのない秘書だが、「読み子ちゃん」のお蔭で今まで入ったことの無い「見える世界?」に足を踏み入れた気分だ。 |