画家 大西 健太さん(近江八幡市在住・32歳)
廃車になったアメ車、自由の女神やアメリカの街並み……従来の日本画では考えられなかった大胆なモチーフと独特な色使いで日本画の世界に新しい風を吹き込む若い画家がいる。近江八幡市の大西健太(おおにしけんた)さんだ。2012年の第44回日展では日本画特選入選を果たし、昨年は滋賀県文化奨励賞を受賞した。
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廃車になったアメ車、自由の女神やアメリカの街並み……従来の日本画では考えられなかった大胆なモチーフと独特な色使いで日本画の世界に新しい風を吹き込む若い画家がいる。近江八幡市の大西健太(おおにしけんた)さんだ。2012年の第44回日展では日本画特選入選を果たし、昨年は滋賀県文化奨励賞を受賞した。
中学・高校時代はテニスに熱中したという大西さん。一方で、物心ついたときから絵が好きで、家中のカレンダーやチラシの裏に絵を描いていたという。高校3年生のとき、美術大学を受験しようと考え、美術の先生に相談したが「普通は早い時期から勉強するもの。今からでは現役合格は無理」と言われた。それでも大西さんはあきらめず、地元のアトリエ教室で夏期講習に通って猛勉強し、京都精華大学芸術学部造形学科に合格した。
専攻は日本画。入学してから初めて日本画の世界を知ったが、課題で描かされる絵に違和感を覚えた。
十代からロックやヒップホップなどの音楽、アメ車、スケボーなどのアメリカ文化が好きだった。一般的に日本画は花鳥風月を描くことが多いが、大西さんは自分が興味のあるものを描きたかった。だが、下絵の段階で教授から却下されることもあり、授業に出ないことも多くなった。しかし、これが逆に制作上の刺激になった。
「日本画はこうでなければならないと考えると、みんな同じ絵になってしまう気がして……。既成概念に縛られず別の世界に目を向けたことで、逆に自分の描きたいものがはっきり見えてきました。大学で自由に制作する環境を与えていただいたことが今の自分の力になっています」
2003年、大学3年生のとき、廃車になったアメ車をモチーフに「NOIZE」と題した作品を描き、京展に入選。翌年、マイクを持って歌う少年と自由の女神やアメリカの街並みを描いた作品も入選した。
さらに06年、壁に落書きする若者を描いた作品「Art Soldier」で京展賞を受賞した。
「だめだろうと覚悟していた作品が認められてびっくりしました。大学の教授も大学以外で勉強していたことを認めて褒めてくれました。恐いもの知らずだったことが、かえって良かったのかも知れません」
使う色の数が控えめなのが大西さんの絵の特徴で、見る人が自分の好きな色を気持ちの中で足してくれれば良いと考えているからだという。
大学卒業後は家業の電気工事業を手伝いながら公募展などに出品。
09年に地面に落書きする少年を描いた作品「HANAMICHI」で日展に初入選した。
11年に起きた東日本大震災後、しばらく筆が持てなかったが、昔、病気のときに絵や音楽に支えられたことを思い出し、見る人に温かく寄り添う作品を描こうと決心。改めて必要な芸術とは何かを自分に問い直すきっかけになった。そんな思いで描いた「ONE WORLD」が日展で再び入選。さらに翌年、自然の厳しさと優しさに満ちた大地を背景にする少年を描いた作品「EARTH」で特選を獲得。13年には「hoshizora」が日春展で日春賞を受賞した。
大西さんの作品には決まってユリの花が描かれている。形が好きなことと、花言葉「純潔・無垢」から、純粋な気持ちで描き続けたいという思いを込めているという。
(取材・福本)
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