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生活とつながった器 美しい生き方楽しむ

掲載日: 2015.11.26

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陶芸家 古谷 宣幸さん・朱里さん(甲賀市在住)

片やモノトーンのシンプルな和の器、片やカラフルなマグカップ。作ったのは夫婦共に陶芸家の古谷宣幸(ふるたにのりゆき)さんと朱里(あかり)さん。一見対照的な作品だが、そこに流れているのは「生活とつながった器で、美しい生き方を楽しむ心」だ。

2人そろって弟子入り

宣幸さんは信楽に穴窯を復活させた陶芸家・古谷道生(みちお)さんの三男。妻の朱里さんは奈良の出身で、2人は京都嵯峨芸術大学短期大学部陶芸コースで出会った。2人にとって共通の師である唐津の中里隆(なかざとたかし)さんとの出会いは宣幸さ
んが先だった。
2005年、大学を出た宣幸さんは、日本の六古窯を筆頭に全国の窯場を車で寝泊まりしながら回った。そこで中里さんの作陶現場を見て、ろくろで素早く器を作る技術に驚いた。
翌年、陶芸の森(甲賀市)で開かれた蹴ろくろの講習会に中里さんがゲスト講師として招かれた。陶芸の森の職員が父の同級生だったことから「中里さんが信楽滞在中に使う食器を作っているから見に来ないか」と誘われた。
わずか1カ月間ほどの滞在なのに、醤油差しや小物の箸置きなどは持参し、他は器を自作して食事をするのだという。
「作品のための作品ではなく、心豊かな日々の営みを支える道具としての作品。まさに仕事と生活がつながっている。その一貫した姿、生き方が美しいと感動しました」
その日のうちに酒に誘われ、講習に参加させてもらうことになった。奈良で作陶をしていた朱里さんにも声をかけ、2人で勉強させてもらった。これが2人そろっての弟子入りになった。

「何が必要か」を大切に

牛ベラ

毎年渡米して作陶していた中里さんに誘われ、2007年、アシスタントとして米国へ。ここで2カ月ほど共に生活したことが大いに勉強になった。
中里さんは来客があれば使う食器を自ら洗って自らしまう。食事会ではメニューが先に決まっていて、それに合わせて食器を作る。形も釉薬(ゆうやく)もメニューによって変わる。「何を作るか」ではなく「何が必要か」を考えて作るのだ。
器を作ることが生活そのものと融合していることに宣幸さん、朱里さんは陶芸家として大いに影響を受けたという。
食器を大量に作るのに役立つ「牛ベラ」の使い方も学んだ。ろくろの回し方も無駄のない方式に変わっていった。

 

使って楽しいものを作る

宣幸さんと朱里さんは同じ師匠を持つが、宣幸さんは和物が中心でモノトーンのシンプルなものを好む。一方、朱里さんはアメリカの影響でマグカップやピッチャーなども制作している。
共通しているのは「使って楽しいものを作って、日々友人と共に使う」ということ。最近2人目の子どもが生まれ、夫婦で育児をしながら作品作りに励んでいる。
(取材・越智田)

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