和菓子製造一級技能士 藤原 朋(ふじわら とも)さん
(東近江市在住)
今春実施された和菓子づくりの技能を認定する国家試験で、県内でただ一人一級に合格した藤原朋さん。家族の理解と応援してくれた人たちの励ましが支えになったと振り返る。
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今春実施された和菓子づくりの技能を認定する国家試験で、県内でただ一人一級に合格した藤原朋さん。家族の理解と応援してくれた人たちの励ましが支えになったと振り返る。
厚生労働省による「技能検定」のひとつ、菓子製造技能士(和菓子一級技能士)試験は、県内では合格者がいない年もあるという難易度の高い資格試験だ。実施1か月前に実技試験問題が受験者に公表され、本番では薯蕷(じょうよ)饅頭※1や練り切り※2など4つの課題を3時間で作らなくてはならない。
二児の母親として子どもを寝かしつけてからの受験勉強は連日深夜にまで及び、課題菓子を百個以上試作するなどして受験に備えた。課題の難しさから受験をあきらめる人も多いという。
複数名の審査員が動作の一部終始をじっと見つめる中での作業は緊張の連続だった。技術力はもちろん、分量の正確さや道具の扱い方、身だしなみに至るまで厳しく審査される。
※1 つくね芋の生地で餡を包み蒸しあげた、歴史ある上品な饅頭
※2 白餡をベースにした上生菓子
幼少期、毎年クリスマスが近づくと母親と姉の三人でケーキやクッキーを作ることが何よりも楽しかったという藤原さん。中学2年の時行われた進路を決めるための三者懇談会の席で、菓子づくりの道に進みたいと突然切り出して、母親や教師を慌てさせたこともあった。
菓子づくりの夢が捨てきれない中での高校生活。藤原さんは夏季休暇を利用して大阪にある調理師専門学校のオープンキャンパスに参加した。そこは調理設備の整った憧れの学園だった。
今度こそ夢をかなえようと思ったが、「大学を出てからでも遅くはない」と諭す両親に心配をかけたくないと、同志社女子大学に進学した。
大学卒業後は地方銀行に就職したが、長くは続かなかった。ブライダルMCや事務職を経験したあと、銀行の同期入社で出会った夫と結婚。子どもが幼児園に通うようになったある日、クリスマス会で園児と先生87人に配るクッキーとマフィンの製作を頼まれた。美味しい、可愛いなどと保護者からもうれしい言葉をもらった。
「趣味が仕事になるかも」と思いかけたころ、茶房「坪六」を営んでいる実家の母親から以前、お茶に合う和菓子を作って欲しいと頼まれたことがあった。和菓子づくりの経験は、子どものころ祖母と一緒に草餅や桜餅、おはぎを作った程度だった。
県商工会の紹介で、日野町にある和菓子の老舗「かぎや菓子鋪」で修業を始めた藤原さんは、和菓子づくりの奥深さに魅せられていった。
今も茶房の定休日には、八代目植田真之介さんの下、職人たちの作業に向かう謙虚な姿勢や道具の扱い方など、和菓子づくりの基本ともいえる大切な心得を学んでいる。
茶房では、苺を煮詰めて白餡に混ぜたものや、自宅で採れた梅や夏みかんピールを使った品など、季節に合わせた創作和菓子を提供している。
「日本人のおもてなしの心が凝縮された和の文化を、お菓子と一緒に気軽に楽しんで頂ければ」と笑顔で話す藤原さん。
(取材・髙山)
◇「茶ろん坪六」で土・日・月曜日開催している茶道教室では、藤原さんの作った四季折々の和菓子が楽しめる。
又、和菓子づくりと日本茶の淹れ方教室も不定期で開催。
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●お問い合わせ
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