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掲載日: 2007.05.23

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麦から育てるパン屋「大地堂」 店主 中田志穂さん

麦から育てるパン屋「大地堂」 店主
中田志穂さん(29歳)

今回の素敵な人は、本格的なドイツパンが評判の「大地堂」の店主、中田志穂さん(29歳)。ドイツから「スペルト小麦」という古代小麦の種子を輸入するルートを作り、お義兄さんの廣瀬敬一郎さんと小麦の栽培にも挑戦している。この秋にはスペルト小麦のパンが店頭に並ぶ予定。

おいしいパンを求めて

大麦(上)とスペルト小麦(下)

ドイツで修行中の中田さん(右)

中田さんがパン作りの道に入ったのは、フランス料理店でパン部門の担当になったことがきっかけだった。なかなか思うように焼けないことに悩み「本当においしいパンを知りたい!」と単身ヨーロッパへ渡り、フランスからドイツへとパンを求めて歩き回った。やがて種類が豊富でむっちりと身の詰まったドイツパンの魅力に引かれ、本場ドイツでの修行を決意したという。中田さんが特に注目したのが「スペルト小麦」のパン。スペルト小麦とは古代穀物の一種で、日本での知名度は低いが、ドイツでは病気の治療に利用されるほど栄養価が高く、食物繊維も豊富とされる。ナッツのような風味とかみしめるほど深い味わいのパンが焼けるのが特徴だ。中田さんはスペルト小麦のパンを日本に紹介したいと考えた。

さらなる研究を経てドイツへ

「農家のライ麦ブロート」直径約19センチ

中田さん(左)姉の美穂さん(中央)義兄の廣瀬敬一郎さん
美穂さんは陶芸家。大地堂で展示・販売も行っている

パン修行の費用を貯めるため帰国し、京都のパン工房で働き始めたころ、中田さんの決意を後押しする出会いがあった。それはふと手にした本に紹介されていた「石窯会研究所」の竹下晃朗さんだった。竹下さんの研究に興味を持った中田さんは思い切って電話をかけ、石窯や小麦の製粉技術などについて詳しく勉強させてもらうことになった。
働きながら勉強を続け、3年後の2005(平成17)年に再びドイツへ。南ドイツのニュルンベルグ近郊の村に滞在し、言葉や文化の違いに戸惑いながらも350年以上続く老舗のパン屋やオーガニック専門店でパン作りを学んだ。

小麦のうまみをじっくりと引き出す

スペルト小麦の麦畑

帰国した中田さんが日野町に大地堂をオープンしたのは昨年12月のこと。自宅の蔵を改造した店舗でパン作りに励む毎日が始まった。
「小麦を挽く時の温度を低く押さえれば風味が増します。また、挽きたての粉を使うと、口に入れた時の甘みが違います」と中田さん。電動の石臼を手回しに近い速度に調整し、1日かけてゆっくりと小麦を挽く。日によって変わる小麦粉の状態を見極めながら、石窯での焼き加減を調整する。神経を使う細かい作業の連続だが「思い通りに焼き上がった時は最高にうれしい」と笑顔がこぼれた。
中田さんはパン作りの一方、専業農家を営む敬一郎さんと、日本初のスペルト小麦の栽培に精を出す。これは小麦を育てるところからパン作りをしたいという思いからだ。中田さんのドイツ仕込みのパンには、熱い思いが込められている。
(取材・高井)

 

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