県立琵琶湖博物館・学芸員 老文子さん(30歳・草津市在住)
「桶風呂」の研究で昨年10月に「日本民俗学会研究奨励賞」を受賞した老文子さんが今回の素敵な人。勤務先であり桶風呂が展示されている県立琵琶湖博物館でお話を伺った。
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「桶風呂」の研究で昨年10月に「日本民俗学会研究奨励賞」を受賞した老文子さんが今回の素敵な人。勤務先であり桶風呂が展示されている県立琵琶湖博物館でお話を伺った。
風呂といえばお湯をたっぷり張った湯船につかるものと思いがちだが、県内では湖東や湖北を中心に昭和30~40年代ごろまで「桶風呂」という独特の風呂が使われていた。これは底のない丸い桶を鋳鉄製の平釜の上に据え、少量の湯を沸かして内部を蒸気で暖める半蒸半湯浴の風呂。竹の笠などでフタをするタイプや、樽のような形をした桶に扉がついたものなど、地域によってさまざまな種類があった。
老さんが桶風呂の研究を始めたのは6年前のこと。滋賀県立大学の大学院で保存修景計画を学んでいたときに、彦根市内の古民家で初めて桶風呂を見て、既成概念を覆す形に驚いた。さらに調査を続けるうちに、桶風呂は決して珍しいものではなく、 以前は一家に1台あるようなとても身近なものだったと知った。「桶風呂に入ったことのある方に聞き取り調査をすると、とてもよく覚えておられて、生き生きと話してくださいました」と老さん。自分が全く知らなかった桶風呂が、使った人たちにとっては思い出の中にしっかり残っていることを実感し、研究する楽しさがさらに増したという。
「日本民俗学会研究奨励賞」を受賞したことは老さんにとって大きな転機となった。「自分の研究を客観的に見られるようになったことで、この研究ならではのユニークさを再発見し、自信がつきました。また取材を受けたり講演をしたりする中で、自分の研究について『分かりやすく話す』ということの大切さを改めて実感しました」とのこと。
研究は大変だったのに、今では苦労が思い出せないという老さん。たくさんの人と楽しく会話できたからこそ、これまで続けてこられたのだと笑顔で話してくれた。
桶風呂の研究だけでなく、県立琵琶湖博物館の学芸員としての職務に励む毎日。桶風呂の展示や体験入浴のイベントを開催するほか、今後は桶風呂の製作過程を記録し、上映することなども考えている。
「形の特徴だけでなく、当時の入浴方法や習慣など、さまざまな角度から調査を続け、滋賀県の地域色豊かな桶風呂文化を伝えていきたい」とこれからの目標を語ってくれた。小柄ながら意欲的に研究に取り組む姿が印象的だった。
(取材・木俣)
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