藤堂 仁美さん 創作人形作家(56歳・近江八幡市在住)
創作人形を作り続けて28年になる藤堂仁美さんが今回の素敵な人。工房がある自宅で制作への思いを聞いた。
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藤堂さんは、洋人形、和人形、レリーフなど、さまざまな人形を作る創作人形作家。紙粘土や磁器を主素材に、美しい女性や無邪気な子ども、雛人形などの作品を手がけている。母親の腕の中で安心して眠る赤ちゃんの姿を表現した代表作の一つ「1/f(エフ分のイチ)ゆらぎ」は、04(平成16)年にパリで開かれた「美の解放展inルーブル」で創造の自由賞を受賞した。08(平成20)年には、箱根彫刻の森美術館(神奈川県)で開かれた公募展「アーツJクラフツ展」で、上位入賞するなど、高い評価を受けている。
藤堂さんが創作人形を作り始めたのは3児の母となった28歳のとき。テレビ番組で「竹のへら」一つで人形の顔が出来上がっていくシーンを見て、衝動的に自分も作ってみたいと思った。紙粘土で人形を作っている友人がいたので、一緒に作り始めた。幼いころ、家庭の事情で家族と離れて暮らしていた時から、人形は心の内を話せる特別な存在だった。本を頼りに独学で人形制作に励み、4年間で120体も作った。「出来た人形は、欲しいと言って下さる方にプレゼントしました。喜んでもらえると、とてもうれしく思いました」。
94(平成6)年からは、大阪に住む川崎裕子先生に師事、7年間、毎月教室に通い続けて腕を上げていった。努力の甲斐があり、97(平成9)年には滋賀銀行で初めてロビー展を開催した。会場に置いた感想用ノートには、多くのメッセージが寄せられた。ノートは今でも藤堂さんの宝物で、つらいときやくじけそうなときは、感想を読み、自分を奮い立たせている。
28年もの間、人形を作り続けて来た秘訣は? と、尋ねると「美容師や服飾デザイナーなど、いろいろな気分を味わえます。人形を作っていると心が安らぎ、何よりも楽しい」と返事が返ってきた。最近は紙粘土の人形だけでなく、磁器の「ビスクドール(※)」にも挑戦し、独学で5年間勉強を続けて来た。「作りたい時に、作りたいものを、心の向くままに作る。その結果、『なんかええなぁ』と思ってもらえたら最高です」。藤堂さんの作品はいずれも温かく、見ているだけで優しい気持ちにさせてくれる。これからも素敵な人形を作り続けてほしい。 (取材・澤井)
※ビスクドール 19世紀にフランスやドイツで流行した、頭部と手が磁器でできている西洋人形。布でドレスを作って着せたりする。
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