ガラス造形家 東 敬恭さん(東近江市在住・41歳)
高温で溶けたガラスに息を吹き込み自由な形を作り出す吹きガラス。作家の思いとガラスの「思い」が融合したとき、複雑で美しい色彩と柔らかな曲線の世界が生まれる。
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高温で溶けたガラスに息を吹き込み自由な形を作り出す吹きガラス。作家の思いとガラスの「思い」が融合したとき、複雑で美しい色彩と柔らかな曲線の世界が生まれる。
1200度の炉で溶かして水あめ状になったガラスの素地をステンレスのパイプに巻き取り、息を吹き込む。吹きながら、ガラスが冷めるまでの短時間に形を整える。高温の炉の前での作業は5~6時間に及ぶこともある。
「体力的にとても大変ですが、一瞬で勝負が決まる緊張感が面白い」と東さん。二つと同じものができないのが難しさであり面白さだ。
作品づくりのポイントは、無理やり自分の意思で形を作るのではなく、ガラスの意思(なりたい形)を引き出すこと。美しく複雑な色、柔らかな曲線が残る作品は「ガラスの意思に耳を傾け、自分のつくりたい形とガラスがなりたい形の到着点」だと話す。
東さんが吹きガラスに出合ったのは就職活動で見学したガラス工場だった。木工家具メーカーで働いたり、インテリアコーディネーターの学校などを転々として、将来に悩んでいた20代のころだった。
「3Kの代表とも言えるつらい仕事ですが、職人の仕事ぶりを格好いいと感じ、自分はこの仕事をやるべきだと確信しました」
ものづくりが好きだったこともあり、6年間、愛知県瀬戸市の陶器会社の吹きガラス職人の下で修業した。
直接手で触れられないので思い通りにいかず難しいと感じることもあったが、一つ克服するごとに楽しさも増した。余裕ができると、与えられた仕事を終えた後に自分でデザインした作品を作るようになった。
もっと自分の思い通りのものを作りたくなり、98(平成10)年、のどかな田園風景が広がる「ことうへムスロイド村」に一目ぼれし、工房「アズーロ グラススタジオ」を設立した。
00(平成12)年の朝日現代クラフト展入選をはじめ、毎年のようにクラフト展で入選、全国各地で個展を開催して多くの人を魅了している。
昨年から長浜の冨田酒造と廃棄一升瓶を新たな酒器として生まれ変わらせる試みを始めた。
大量生産の一升瓶は通常使うガラスの素地よりも早く冷めるため、吹きガラスでリサイクル品を作るのは容易ではない。
苦労しながら作り上げた酒器は、瓶のガラスの色が生き、想像以上の美しい色に仕上がった。緑、青など、涼しげで美しく、日本酒愛好家に評判だった。来春は第3弾としてスモーク色の一升瓶で作る予定になっている。
デザインから出来上がりまでの全工程を1人で担うので、作品には作り手の思いが色濃く映し出される。
「受け取った人に楽しい気持ちが伝わるよう楽しみながら作っています」
器以外の作品も手がけて、ガラスの可能性を広げるため、展示会では鉄のフレームの中にガラスを吹き込んだ作品を発表。最近では、洗面ボウルや照明器具など、暮らしの用具もオーダーメードで制作し、好評を得ている。
(取材・福本)
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