竜王町そば振興会 理事 松瀬 佐二郎さん (52歳・竜王町在住)
「自分で育てたそばで手打ちそばを食べたいな」。そんな酒の席での何気ない一言から「竜王そば」が誕生した。仲間3人が仕掛け人となり始めたそばの栽培が地域の活性化につながり、今ではそばの新ブランドとして全国から注目されている。
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「自分で育てたそばで手打ちそばを食べたいな」。そんな酒の席での何気ない一言から「竜王そば」が誕生した。仲間3人が仕掛け人となり始めたそばの栽培が地域の活性化につながり、今ではそばの新ブランドとして全国から注目されている。
兼業農家のサラリーマンは農作業をすることは少なく、農業を話し合う機会も少ない。13年前、松瀬さんは職場での日々の仕事に追われる中、同じ兼業農家仲間と余暇に楽しめる趣味を探していた。和太鼓やリサイクル瓶によるガラス細工などいくつか候補があったが、「せっかく田んぼがあるのだから」と転作田でそばを栽培、「自分で育てたそばで手打ちそばを食べよう!」ということになった。
種を植え1カ月もすると真っ白い花がきれいに咲いた。その年は害虫被害で収穫できず、そばは食べられなかったが、そばの花の美しい景観が地元で話題になった。翌年には仲間も増え3㌶の田で再チャレンジ! 秋には待望の自作の手打ちそばが食べられた。
「この喜びを地域の人たちにも知ってもらおう」。活動拠点もなければ行政の支援もないゼロからのスタートだったが、「出前そば打ち教室」や「出前屋台そば」などのイベントを集会所や学校などへ出向いて開き、打ちたてのそばを味わってもらった。テーブルさえ準備すれば場所を選ばず開けることや、身近な仲間と気軽に楽しめることが好評で、県外からも次々に予約が入った。イベントに毎回食べに来てくれる常連客も増え、竜王そばの知名度が高まっていった。
そのうち、そばで地域を盛り上げたいと考えるようになり、00年、「そばを作ると村が栄える」をキャッチフレーズに、行政には頼らないイベント「そば&自然食フェスティバル」を企画した。実行委員には、100人が名前を連ねた。そば栽培に本腰を入れるため、01年に「竜王町そば振興会」を結成。02年には念願の拠点を町内にオープンさせた。「そば処さわえ庵」で、生産から加工・販売まで、そばの地産地消を実現した。05年には、そばとしては唯一、県の環境こだわり農産物の認証を受けた。これらの取り組みが認められて、06年「全国そば生産優良地区表彰」を受賞した。また04、06、09、10年にはそばの本場・出雲で開催される「出雲全国そばまつり」に招待されて出店、「近江牛肉そば」で売上ナンバーワンに輝き、竜王そばの名を全国に広めた。
現在は安土駅前の直営店「さわえ庵」をはじめ、道の駅竜王「かがみの里」、「蒲生野の湯」、草津道の駅「ロックベイガーデン」、休暇村近江八幡など、竜王そばを味わえる協力店が増えた。
生産者も竜王町内の80農家だけでなく、近江八幡市、東近江市、甲賀市を含む60㌶に広まった。試験田を設け、どの品種が収量・品質ともに竜王町に適しているかを調べ、品質向上にも努めている。
「仲間と楽しみながらやってきましたが、規模が大きくなり法人化や活動拠点など新たな課題も出てきました。農作業小屋、製粉所、製麺所、店舗が分散しているので1カ所にまとめた『そばの館』のような施設が持てればと思っています。そして、竜王そばを信州や出石などに負けない全国ブランドへ育てたいですね」 (取材・福本)
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