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甲賀市のカフェ「アプリコット」の店内では板張りの床の上で思い思いに遊ぶ子どもと円卓を囲み楽しそうに談笑する母親の姿が見られる。代表の鹿田由香さんは３児の母親として、自身も体験した子育ての不安やつらさを少しでも和らげてもらいたいと、母親の立場に立った支援活動を続けている。
90年代から少子化対策として保育園の整備など社会的な子育て支援が広まったが、家庭で子どもに向き合う母親への在宅育児支援は置き去りにされたままだった。
鹿田さんが会社を辞め、第１子を出産した92年当時はまさにそんな時期。世間では「専業主婦は恵まれていて、何不自由なく自宅で子育てしている」という認識が強かった。
「今まで時間もお金も自由だったのに、出産と同時に何も自分の思い通りにならない……。初めての子育てで周囲に頼る人もなく、とても孤立した気分でした」
子どもの成長やしつけ、遊び場など子育てに関する情報がどこで手に入るのかも分からず、悩む日々が続いた。
「私だけではない。同じ境遇で悩んでいる仲間がいるはずだ」
そう思った鹿田さんは、ちょうどそのころ普及し始めたインターネットを使うことを思いついた。ホームページを自分で立ち上げ、問いかけてみたのだ。１人、２人と連絡が入り始めた。不安を共有できる仲間が増えていった。
そんな仲間たちと、「情報が手に入らないなら自分たちで発信しよう」と滋賀の子育て情報誌を発行することにした。
「ちょうど第２子出産と重なったのですが、メールのやりとりなど自宅でも作業できるので、無理なく続けられました。自分の名刺を持ち、私も社会にかかわっていると感じられうれしかったです」
県内に子育てサークルやＮＰＯが増えた時期でもあった。それらをまとめる「滋賀子育てネットワーク」の活動にも参加、現在は代表を務めている。
04年、第３子の出産を期に、それまでの間接的支援だけでなく、人と人を直接つなぐ支援活動も始めた。
甲賀市の貸館で週３回、子育てサロン「アプリコット」を開設した。○月○日開催といったイベント型でなく、天気や子どもの体調を見ながら、ふらりと立ち寄れる場所が必要だと感じていたからだ。２年前からは現在の場所で「コミュニティカフェ アプリコット」をオープン。より気軽に誰でも利用できるようカフェ形式でランチも提供する。スタッフは元利用者で子どもの入園・入学で少し時間ができた母親たち。子育ての良き先輩として話し相手になる。知らない人同士でも話しやすいよう円卓を使い、スタッフが間に入ってきっかけづくりをすることも。
また４月からは入園前の子どもが通う「プチぱれっと」を開園。毎週水曜日、９時半から12時半まで親子が離れる時間をつくり、子どもの初体験の場と母親のリフレッシュの時間を提供している。
「子育てに悩む人には仲間が必要です。祖父母世代の人にも利用してもらい、母親だけでなく地域のみんなで子育てできるようになればいいですね」（取材・福本）
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2024年11月22日
2024年11月1日
