セーリング選手 西山 克哉さん(湖南市在住・44歳)
ヨットで海上のブイまでのコースを往復してタイムを競うセーリング。車椅子生活で整体師の仕事をしながらセーリングを楽しむ西山克哉さんは3人乗りの部門で、このほど日本代表としてロンドンパラリンピック出場を決めた。機能回復だけでなく生活を楽しくするリハビリを! そんな心がけが実を結んだ快挙である。
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ヨットで海上のブイまでのコースを往復してタイムを競うセーリング。車椅子生活で整体師の仕事をしながらセーリングを楽しむ西山克哉さんは3人乗りの部門で、このほど日本代表としてロンドンパラリンピック出場を決めた。機能回復だけでなく生活を楽しくするリハビリを! そんな心がけが実を結んだ快挙である。
西山さんはビルの窓ふきのアルバイトをしていた24歳のとき誤って7階から転落。
一命は取り留めたものの足が不自由になった。突然の事故だっただけに心の整理がつかず、ぼうぜんとするばかりで、精神的に落ち込んだ。
そんなとき背中を押してくれたのは友人だった。友人の励ましを支えにリハビリを開始。最初は補助??を使って近所を歩くことから始めた。ほんのそこまで歩くのにも長時間かかったが、耐えながら徐々に距離を増やしていった。
あるとき、歩きながらふと思った。リハビリも大切だが、障害があろうとなかろうと楽しい人生を送りたい。同じするなら機能回復だけではなく、日々の生活を楽しく快適にするリハビリをしていこうと。
そこでまず、心を楽しくしてくれる自然の力を借りようと考え、ハイキングを始めた。さらに、友人に誘われてカヌーも。「水の上では健常者も障害者も同じだ!」。この新鮮な発見で、水上スポーツの楽しさに目覚めた。
愛知県の蒲郡市でヨット体験ができることを偶然ホームページで知った。早速、体験教室に参加。ヨットはカヌーのようにゆっくり景色を見ながら楽しむのではなく、飛行機で飛んでいるような感覚だった。風を切って進むスピード感にすぐに夢中になった。
コーチに誘われて、続けて練習に参加することにした。ところが西山さんを待っていたのは世界選手権に向けての猛特訓だった。平日は整体の仕事、週末は蒲郡市に通って練習するハードな日々が続いた。西山さんが担当するのは「メイン」。帆を操るポジションだ。帆を操るロープを引くには強い力がいるため頑丈な上半身が必要だ。
「命に関わるスポーツなのでルールが非常に多く、それを覚えるだけでも大変でした。ロープの引き具合がたった1㌢違うだけでもレースが大きく変わるのが面白く、厳しい練習にも耐えられました」
11年7月、イギリスのポートランドで開かれた世界障害者セーリング選手権。14位以内に入ればパラリンピックの代表になれる。周りはヨーロッパ勢など強豪ぞろい。勝つことよりも楽しもうと考え、気持ちをコントロールしようと努力した。
ところが始まってみればやはり勝ちたい!……理屈抜きで闘志がわき上がってきた。毎日2レースを戦い、1週間かけて行われる大会。前半は下位だったが、何度もミーティングを重ねて対策を立て、順位はどんどん上がっていった。結果は見事14位。パラリンピックの出場権を得た。
「海はきれいな夕日を背に穏やかなこともあれば、荒れて恐ろしいときもあります。海の、その日の『顔』を読むのも楽しいですよ」勝ち負けを競う過酷なレースの中でも、楽しむ心は忘れない。
(取材・鋒山)
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