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掲載日: 2012.09.26

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陶芸家 竹村 智之さん(大津市在住・50歳)

ろくろを使わず、石こう型の中に無数の筋状の素材を重ねて造形し、独自の手法で着色、「虹のように輝く美しい風合いの磁器」を作る竹村智之さん。自然の情景の中にある光や色をテーマにした作品は繊細で美しく、数々の賞を受賞している。

軽い気持ちで陶芸に

デザインの道に進みたいと考え、大学はデザイン科を志望した竹村さん。競争率が10~20倍と非常に高かったため、いったん入学してから学科変更すれば良いと軽く考えて陶芸科に入った。
だが、やり始めると面白く、ろくろを使って形を作るのは予想外に楽しかった。
結局、大学は陶芸科に籍を置いたまま卒業。2年後京都で工房を構えた。どこかデザインに対する夢も捨てきれなかったというが、この欲張りな気持ちがその後、大きく花開くことになる。

人生変えた磁器との出合い

今から15年前、九州の有田で真っ白な磁器土に出合った。
磁器は陶石と呼ばれる白い石を砕いて作った磁器石で成形する。きめ細かく、手触りが良くて色付けも鮮やかだった。
「自分の探していたものはこの美しい白だ!」と確信。それまでの心のわだかまりが一気に吹っ飛び、まさに水を得た魚の心持ちだった。

新しい制作方法に挑戦

一気に個性が花開いたのは、大津市に工房を移してからのことだった。新しい制作方法や着色にチャレンジしていたあるとき、表面に木のような感じを出したいと考え、磁器の素材を生クリームを絞り出すように垂らしてみた。
すると、思いもかけない模様ができた。さらにエスカレートさせ、作品全体を線状の素材を重ねて作ってみようと考えた。
まず、石こう型を作り、その中に1~2ミリの筋状の磁器素材を絞り出し、形を作った。その??間に色を付けるため、いったん乾かしてから、その上に材料を絞り出す作業を繰り返した。適度な厚みの作品に仕上げるには随分、根気が必要だった。
??間があるため乾燥させるとヒビが入って作品にならなかった。焼き上げてからも壊れることが多く、悪戦苦闘した。材料に接着剤や繊維質のものを混ぜたり、考えられることはすべてやってみた。色付けも簡単ではなく、思うような色が出るまでには失敗の連続だった。
「雨上がりの虹には夢や希望があふれているでしょう……、水滴の中に見える、あの一瞬のきらめきなどを取り込もうと、こだわり続けてきました」
こうした苦労の甲斐あって、とうとう作品は完成した。

多くの賞を受賞!

新しい感覚から作り出される竹村さんの作品はすぐに話題になった。
「第59回滋賀県美術展覧会」特選、「2009京展」京展賞など数々の賞を受賞した。
全国各地を回って個展も開いた。10月には地元滋賀ではじめての個展を開く。
そのために新たにオブジェ制作にも挑戦している。
「滋賀に住むようになって、この豊かな自然の中で仕事ができるのが何よりうれしい。最近、原発やいじめの問題など、心を痛めることが多かったので、これに対する私の気持ちも少し表現してみました」
(取材・澤井)

 

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