革職人 佐伯 清久さん(栗東市在住・41歳)
革職人・佐伯清久(さえききよひさ)さんの前職はJRA(日本中央競馬会)の騎手。2005年に引退するまで16年間レースで戦ってきた。多くの騎手が引退後、調教師や調教助手に転身する中、佐伯さんは自宅に工房を構え、革職人になる道を選んで頑張ってきた。
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革職人・佐伯清久(さえききよひさ)さんの前職はJRA(日本中央競馬会)の騎手。2005年に引退するまで16年間レースで戦ってきた。多くの騎手が引退後、調教師や調教助手に転身する中、佐伯さんは自宅に工房を構え、革職人になる道を選んで頑張ってきた。
佐伯さんは、馬に乗る時に使うチャップス(ズボンの上からふくらはぎに装着し、脚を保護するもの)やヘルメットのほか、財布、かばん、アクセサリーなどの小物を製作している。
佐伯さんが作るチャップスは厚みがあり、丈夫で脚が曲げやすいと評判だ。さらに、ヘルメットのハーネス部分の縁に模様が入っていたり、しっぽのような飾りが付いていたりと、おしゃれで遊び心がある。
「騎手を経験した佐伯さんだからこそ使う側の気持ちを分かっている」と好評で、注文が相次いでいる。
騎手という仕事があることを中学生のときに知った。以来、騎手にあこがれ続け、中学卒業後、千葉県にあるJRAの競馬学校に入学。3年間の養成課程を経て騎手免許試験に合格した。
念願かなって晴れのレースに騎手としてデビューするまでは順調だったが、残念ながら成績が伸びなかった。さらに悪いことに障害レースでケガをすることも少なくなかった。
「自分より、もっと早く、小さいころから馬に乗り、騎手を目指して頑張ってきた仲間に勝つのは難しい……この仕事は自分には向いていない」という思いが強くなってきた。
引退のきっかけは2004年、調教で手首をケガしたことだった。入院中、将来について考えた。もともと手先が器用だったことから「物作りの仕事をしたい」と決断。翌年、引退へと踏み切った。
佐伯さんは、騎手時代から趣味で木工、粘土、ビーズでアクセサリーを作っていた。
革を素材に初めて作ったのは財布だった。たまたま行った店で、革製品を作る道具を見つけ、買って財布を作ってみた。出来上がりは考えていたレベルとは程遠いものだったが、うれしかった。
以来、本を読みながら独学で勉強を始めた。革を裁断してミシン掛けをする。ミシンで縫えないものは穴を開けて手で縫う。自分のジーパンをほどいて型紙を作ってはズボンを作るというように、チャレンジの連続だった。
引退後、本格的に革製品のオーダーメードの仕事を始めたが、すぐに軌道に乗るわけではなかった。退職金を切り崩しながら食いつなぐ生活が続き、アルバイトも考えた。
だが、石の上にも3年、少しずつ芽が吹き始めてきた。競馬の祝勝会に招待された席で財布、キーケース、コインケースをそれぞれ50個ずつ注文を受けたことが大きかった。納入した品が好評で、これが弾みとなって少しずつ注文が増えていった。
今では、チャップスやヘルメットを中心に財布やかばんなどの注文が多いという。「とにかく、使いやすい物を作ろうと考えています。とことん使い込んでもらえるような物を作りたいです」
さらに、オーダー品だけでなく、自分で考えたオリジナル商品も増やしていきたいという。
毎月、第1日曜日には大津の「フォレオ一里山」、第2日曜日には栗東の「さきら」の手作り市に出店している。
(取材・澤井)
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