画家 北川 安希子さん(大津市在住・29歳)
琵琶湖など、身近にある水辺が持つ奥深く豊かな表情を大胆な構図と繊細なタッチで描き、滋賀県次世代文化賞を受賞した北川安希子(きたがわあきこ)さん。
湖国が生んだこの若手アーティストの素顔に迫ってみた。
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琵琶湖など、身近にある水辺が持つ奥深く豊かな表情を大胆な構図と繊細なタッチで描き、滋賀県次世代文化賞を受賞した北川安希子(きたがわあきこ)さん。
湖国が生んだこの若手アーティストの素顔に迫ってみた。
身をくねらせるように横たわる冬枯れの樹木、水面を揺らす波紋、渡り鳥……。
北川安希子さんが描く水辺の風景はどこか哀愁感が漂う。
「美しいだけでなく、厳しさ、切なさ、力強さ……さまざまな自然の表情を作品の中に表現していきたい」と北川さん。
普通なら、何となく見過ごしてしまいそうな日常の風景を感覚的に切り取り、日本画特有の色遣いで独自の表現をしている。
幼いころから絵を描くことが好きだったが、本格的に描き始めたのは東大津高校の美術部に入部してからのこと。
クラブのメンバーに刺激されて懸命に描く努力が実り、17歳のときに京都市美術館主催の「京展」に入選。元々は油絵だったが、美術館や図書館の本などで見た、日本画の持つ独特の絵肌の美しさや自然への表現に新鮮さを感じ、興味を持つようになった。
その後、成安造形大学へ進学、日本画を専攻することにした。
大学で描き続けているうちに、自分の表現に迷い、試行錯誤する日々が続いた。そんな中、個展で多様な表現の作品を展示したとき、大学の恩師から「他の人ができる表現ではなく、北川さんらしさを大切にね」と言われた。
この言葉がきっかけで、何が自分らしいのか?……自分が描きたいものは何か?……と、じっくり考えてみた。その結果、それは身近な自然や動植物だということに気がついた。
早速、題材を求めて滋賀や京都の山河を片っ端から歩いてみた。湖西線に乗っていて、ふと気になる風景を見つけ、思わず途中下車したこともあった。
こうした繰り返しの中で、琵琶湖や植物園などの水辺の風景に徐々に心を奪われるようになっていった。
そこは、「自然の深み」「時間の積み重ね」「おどろおどろしさ」「自然の変化」がいっぱいで、「この感覚を表現したい!」という、インスピレーションを得た。何度も足を運び、繰り返しスケッチし、写真を撮った。
同じ場所でも季節や天気によって見え方が全く違ったからだ。
色の出し方も工夫するよう心掛けた。
色を一度重ねて終わるのではなく、背景を一度描いて塗った後、その上から透明感のある白や薄めの色を塗り、下の色を透かして深みを出している。
日本画は一つの色にも多彩な種類がある。より表現したいことに合う色を求めて、日本画以外の画材や技法も併用する。選択肢が豊かなところが面白いが、使いこなすのは難しい。北川さんは、その中でより自分に合う色と色の重ね方や魅せ方はないかと、いつも模索しているという。
北川さんの創作活動は、常に終わりの無い試行錯誤の延長線上にあるのかも知れない。
2011年に京都日本画新展で大賞を受賞し、昨年は滋賀県次世代文化賞も受賞した。若手日本画家として大きな注目を集めている。
3月30日に開かれる次世代アーティストの祭典「びわ湖・アート・フェスティバル」では、2㍍を超える大作「軌跡― 水の森 ―」と新作の発表も予定している。
(取材・福本)
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