グラスサンドアート作家 冨居 邦子さん(愛荘町在住)
透明なグラスにカラフルな砂を注ぎ、その砂の層で絵を創作するグラスサンドアート。6年前、その美しさに偶然出合った冨居邦子(とみいくにこ)さん
は、ほとんど独学で技法をマスターし、作品を作り続けてきた。その作風は、微細でリアル、どこか懐かしさを感じさせる心象の世界だ。創作の現場で魅力を探ってみた。
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透明なグラスにカラフルな砂を注ぎ、その砂の層で絵を創作するグラスサンドアート。6年前、その美しさに偶然出合った冨居邦子(とみいくにこ)さん
は、ほとんど独学で技法をマスターし、作品を作り続けてきた。その作風は、微細でリアル、どこか懐かしさを感じさせる心象の世界だ。創作の現場で魅力を探ってみた。
“運命の出会い”というものがあるなら、冨居さんにとって、まさにグラスサンドアートがそれだった。6年前、百貨店で偶然、グラスサンドアートの作品を目にした。グラスの中に、シンプルだが見事な波模様がカラフルな砂で表現されていた。
「どのようにして描かれているんだろう?……自分にもできるだろうか?」
心をわしづかみにされたような思いで、一目ぼれした瞬間だった。
思い立ったら即行動。グラスサンドアートに関するいろはをインターネットなどで調べ、自分でも作ってみて少しずつ疑問を解消していった。沖縄に作家がいると知って習いに行ったこともある。今も技法を学ぶため、たびたび足を運んでいるが、大半は独学。買い集めた砂、瓶、グラスは数百種類にも及ぶ。
砂を積み重ねて描くので、横に広がる画像を表現するのは比較的簡単だが、縦のラインを出すのには苦労するという。
周囲の砂と交じり合わないように、砂を圧着させながら積み重ねる。
水や熱で固めることもあるが、使いたい色や、使いたい粒子の大きさが違い、固められないこともしばしばだ。
さらに、砂は少しでも衝撃を加えると崩れてしまうので、制作中の作品を移動させるのは至難の技だ。
当然ながら、一度色が混ざった砂は元に戻すことはできない。だから、何らかの理由で砂が混ざった時点で作品作りは失敗に終わる。
だが、たまにそこから新しいアイデアが生まれることもあるから不思議だ。冨居さんは、混ざり合った砂や制作途中でこぼれた砂も次の作品作りに生かすため、大切に保管している。
「失敗して混ざりあった砂の色が、別のものを表現するのにぴったりな色になったりする場合があります。
失敗が次のステップにつながることもあるのです。だから、簡単にあきらめてしまうわけにはいきません」
初心者用キットが販売されているので、簡単なものなら誰にでもできそうだ。しかし、冨居さんの作品はそんなレベルではない。
横に流れる色砂で「海」「草原」「棚田」などを表現。風景の中に川が流れていたり、カモメや気球が飛んでいたり……しっかり細部まで描く。リアリティがあってなおかつ、穏やかに広がる奥深い表現が持ち味なのだ。
風景画なので下絵があるのだろうと思って尋ねてみると「私、全く絵が描けないんです」と意外な返事が返ってきた。
砂を落とす過程で、頭の中のイメージを作品にしていくそうだ。写真を参考にすることもあるが、冨居さんの頭の中を画像が通過していくうちに独特の風景に変わっていくという。
「いいなぁ」と考えたらすぐに行動し、籐工芸、折り紙、パン作り、さをり織りなど、若いころから多くのことに挑戦してきた。
「もっと、琵琶湖や伊吹山の風景を描いてみたいですね。砂を自分で色付けし、砂を固める方法も研究してみたいです」。
グラスサンドアートへの意欲はまだまだ止まるところを知らない。
(取材・福本)
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