画家 福山聖子さん(大津市在住)
朝日新聞滋賀版に、県内の風景のスケッチとエッセーを連載している画家の福山聖子(ふくやま しょうこ)さん。「軒先に洗濯物が干してある民家」など、その土地の日常の風景を繊細な線と墨の濃淡で描き続けて25年。スケッチは1000枚以上になった。古里の思い出が蘇り、懐かしい気持ちにさせてくれる作品の数々。
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朝日新聞滋賀版に、県内の風景のスケッチとエッセーを連載している画家の福山聖子(ふくやま しょうこ)さん。「軒先に洗濯物が干してある民家」など、その土地の日常の風景を繊細な線と墨の濃淡で描き続けて25年。スケッチは1000枚以上になった。古里の思い出が蘇り、懐かしい気持ちにさせてくれる作品の数々。
福山さんは嵯峨美術短期大学(現嵯峨美術大学)時代は油絵を描いていた。カバンのデザインをする会社に就職したが数年後退職し、大津市歴史博物館のオープニングスタッフとして勤め始めた。ある日、博物館までのイラストマップ看板の制作依頼を受け仕上げたが、このことが福山さんの人生を大きく変えるきっかけとなった。
看板を気に入ってくれた館長の推薦で、当時の朝日新聞滋賀支局長から読者投稿欄のカットを依頼され、1992年から始めた。与えられたスペースは5センチ四方。テーマは無かった。
「何を描こう?」うれしい反面プレッシャーもあった。学生のころから好きだった「滋賀の民家や暮らしを描こう」と決め、精力的に県内各地を訪れた。「洗濯物が干してあるような生活感のある風景」や「木造や昔の洋風建築など歴史の染みついている建物」など、暮らしに密着した風景を選んで描いた。心に響くものが見つからないときは描かずに帰ることもあった。
「スケッチを着彩で描くと、モノクロの紙面に載ったときイメージが変わるかもしれない」と、墨で描くことにした。スケッチは3,4時間その場で描き、家に帰ってから墨で濃淡を補う。
2002年からは掲載スペースが広がり、絵とエッセーで綴るコーナーになった。掲載日を心待ちにしているファンも多く、福山さんのスケッチを見たら必ず描かれた場所に行く人もいるという。
新聞以外に、季刊誌「湖国と文化」や業界紙などにスケッチやエッセーを掲載する仕事も多くなり、栗東市観音寺のスケッチ「天空の星」は、市民向けパンフレット「百年先のあなたに手渡す栗東市景観計画」の表紙に採択された。
「ありがたいことに、先日大津市の町家ギャラリーQで『湖都彩々』展を開き、四半世紀にわたる地元大津のスケッチを展示させていただきました。大津の出来事を振り返るコーナーでは、ハガキ大にしたスケッチコピーをディスプレイし、観覧者の感想が書かれたカードも一緒に展示したら好評でした。自分が惚れ込んだ風景をたくさんの方に見ていただけてうれしいです」
福山さんはスケッチを描いている時、自分もその風景に入り込んで生活している姿を想像する。言い伝えなどを聞いてその土地のことを知るのも楽しい。
「ここに嫁いできて田んぼ仕事をさせられて田舟を漕いで田んぼまで行って…」と苦労話を延々と話してくれたおばあちゃんもいた。どのスケッチを見ても、出会った人など描いていた当時の情景を思い出すという。
「スケッチを描いていると、下校中の子どもたちが絵をのぞいたり、そばで遊んだり、一緒に絵を描いたりした楽しい思い出があります。少し前まではこうしたことがよくありましたが、最近は子どもの犯罪が多いせいか興味があっても近づいて来てくれません。好奇心の芽が摘まれているような気がして悲しいです。まだ行きたい集落はたくさんあります。人との触れ合いを楽しみにスケッチブック片手に県内を周っています。気軽に声をかけてくださいね」 (取材:2017年11月 鋒山)
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