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信楽と共に幾年月
夫婦で紡ぐ 作陶人生

掲載日: 2019.12.2

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森川 利勝(もりかわ としかつ)さん、節子(せつこ)さん
(甲賀市在住)

信楽町に陶工房を持ち、ロクロや石こう型を使わずすべて手作りで置物を作る森川利勝さん、節子さん夫妻。もともと陶器メーカーで営業をしていた利勝さんと、内職で陶器の生地を作っていた節子さん。15年ほど前工房を設立し、そこで考案した「親子の干支置物」は口コミで人気が広がり1シーズンで1200セット作ったこともある。師走になると毎年買い求めにやって来るファンも多い。

営業畑から一転 焼物工房を作る

秋が深まると森川さんの工房は忙しくなる。今は来年の干支・ねずみの置物作りの最盛期だ。通常は泥状の土を石こう型に流し込む作り方が一般的だが、森川さんは土を丸めて作る。
「当初は難しかったが今では土の重さも計らず目分量で作ります。同じものはできないのがおもしろいですね」。陶器メーカーに40年間勤めた利勝さんはずっと営業畑で土に触ったことはなかったが、「人ができることなら、できないことはない」と、一から手作りで焼き物を作ろうと決心し58歳のとき退職した。家の敷地に工房を作り、当時内職で陶器の生地作りをしていた妻の節子さんと二人三脚でスタートした。
「ほかで作ってないものが作りたい。花入れや花瓶などは機械化して作られている。手作りなら干支の置物が売れるだろう」と思った。サンプルを作って並べると一体ではさびしく感じられ、親子のペアにしてみた。当時珍しかった「親子の干支置物」の誕生だ。
「昔は、床の間に置く大きい置物が主流でしたがライフスタイルが変わり、床の間がある家が少なくなりました。玄関の棚にちょこんと置けるようなものが良いと思いついたのです」。粘土細工は小中学校の授業以来だったが、作り方は把握していた。しかし最初は販売に結び付く商品はできなかった。

2人それぞれ響き合い

利勝さんは節子さんのアドバイスを受け、持前の負けん気で作陶の技術を磨いた。次の課題は、どうすれば売れるか?だった。元営業マンの利勝さんの血が騒いだ。幸い信楽の陶器屋さんとは顔見知りが多かったので店を回って置いてもらった。「親子の干支置物」は徐々に注文が増えていった。信楽焼のパンフレットに掲載されると口コミで広がり、毎年1000セット以上、多い年には1200セットを作るまでになり、干支以外の注文も入るようになった。刷毛で釉薬を塗り、一色ごとに乾かすので仕上がるまで3週間ぐらいかかる。記念品用に大口の注文もあり、忙しいときは朝8時から夜9時ころまで工房にこもることもある。
「家内の女性らしい優しい色合いの品と、私の大胆な形や色づかいの品。それぞれに個性があり批評し合いながら創作しています」

干渉はほどほどに

二人とも70代になり、利勝さんは20年前に始めたシニア野球の仲間や近所の人たちとの交流を楽しんだり、節子さんは、大正琴や手芸などの趣味を活かしながら作陶活動を続けている。
「お互いにやりたいことを認め合い、干渉しすぎないことが大事ですね。時々遊びに来る孫も見よう見まねで粘土遊びをしています。信楽で生まれ育ったおかげでものづくりに携わることができました。遠方から家族で毎年工房を訪れて買ってくださる方もあってありがたいです。健康に気をつけて活動を続けていきたいです」 (取材・鋒山)

●お問い合わせ
滋賀県甲賀市信楽町長野1173-3
手づくり陶房もりかわ
TEL0748-82-1891

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