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漁師が築く琵琶湖の景観 淡水と共に暮らす

掲載日: 2023.11.1

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フィッシャーアーキテクト代表
駒井 健也(こまい たつや)さん(大津市在住・31歳)

大学院で環境建築デザインを学んだ駒井健也さんが選んだ職業は漁師だった。1000年以上続いてきた湖国の文化を後世に引き継ぎ、琵琶湖と共に暮らす風景の素晴らしさを漁師の立場から発信し続けている。

古里が無くなった

栗東で生まれ育った駒井さん。小学3年生のとき道路拡張のため自宅が壊され、田んぼや傍を流れる小川で魚釣りやザリガニを捕って遊んだ風景が無くなった。古里を失ったという喪失感は、自然や数字が好きだった駒井さんにとって環境建築を志すきっかけとなった。
滋賀県立大学環境科学研究科環境建築デザイン科に入学し、国内はもとよりヨーロッパやアジアの近代建築や人々の暮らしを電車と自転車を使って見て周った。イタリアの海上都市ベネチアやインドのガンジス川で見た人と水が関わる光景は、その後の駒井さんの人生に大きな影響を与える基となった。
「人と水辺の営み、生業も含めてそこにあるものを輝かせるような場や風景を作り上げたい。それが私にとっての建築です」

漁師になる

琵琶湖の漁師という職業は、湖魚を獲ると同時に環境や風景を築くことであり、建築にもつながると思った駒井さん。
琵琶湖の漁師は年々少なくなりほとんどが60歳代以上という現状の中で、漁業を稼げるモデルにし生きがいのある仕事にするにはどうしたら良いか。同大学院に進み院生時代漁船に乗りこみ漁体験もした駒井さんが出した結論は、自ら漁師になってモデルを作ることだった。
卒業後志賀町漁業協同組合の親方に弟子入りして漁師の厳しさを体得する一方、国の漁業人材育成制度を活用して研修を重ねた。
3年経過した2020年漁師として独立し、琵琶湖の伝統漁法エリ漁を軸にした魚の販売や漁体験ツアー、琵琶湖を取り巻くさまざまな分野の人との交流を図る施設、フィッシャーアーキテクトを設立した。

芸術家に漁師体験

芸術家らに漁体験をしてもらい、琵琶湖漁業と芸術の接点をさぐりながら作品に表現する「BIWAKOアーティスト・イン・レジデンス」を昨年行った。琵琶湖の暮らしをアーティストの視点で作品を制作する試みで5人の作家が挑み、大津市の和邇図書館で作品が発表された。
今年は8人の作家が集い、12月5日から10日まで県立美術館で展示される。
漁の傍ら網の修理や組合員と一緒にヨシ刈りを行ったり、茨城県・霞ケ浦、福井県・三方五湖、琵琶湖、それぞれの湖で働く漁師が獲った天然ウナギの食べ比べをしたりするなどユニークな企画を打ち立て、「淡水の暮らし」をSNSなどで発信している。
「異分野の人たちと協働で、琵琶湖の暮らしを伝えていくことが目標」と駒井さんは話す。
(取材・髙山)

 

 

●お問い合わせ
フィッシャーアーキテクト
滋賀県大津市八屋戸944
TEL:080-3862-1380
mail:biwako.fisher.architect@gmail.com

 

 

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