藤野 純一(ふじの じゅんいち)さん(高島市在住・41歳)
高島市安曇川町にある筆工房「攀桂堂(はんけいどう)」の製作した巻筆が、今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の題字の揮毫(きごう)※に使用された。製作したのは父親の筆師十五世藤野雲平さんと息子の純一さん父子。純一さんは次代を担う筆職人をめざして、江戸時代から代々受け継ぐ一子相伝の技を、父親の薫陶を受けながら作り続けている。
揮毫:毛筆で言葉や文章を書くこと
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高島市安曇川町にある筆工房「攀桂堂(はんけいどう)」の製作した巻筆が、今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の題字の揮毫(きごう)※に使用された。製作したのは父親の筆師十五世藤野雲平さんと息子の純一さん父子。純一さんは次代を担う筆職人をめざして、江戸時代から代々受け継ぐ一子相伝の技を、父親の薫陶を受けながら作り続けている。
揮毫:毛筆で言葉や文章を書くこと
平安時代に平仮名が発明されやがて文字として発達すると、平仮名のもつ丸みや柔らかさが女性の気持ちを表現する文字として、宮廷に仕える女性の間で広まっていった。
現在放映中のNHK大河ドラマ「光る君へ」の中で文字を書くシーンが度々登場するが、使われている筆は「巻筆」という穂先を麻糸で縛ったあと手漉き和紙を巻きつけ製作したもので、毛の弾力が増し繊細な線が書きやすいという。現在国内で作っているのは藤野さん父子だけだ。
純一さんは大学卒業後3年間、広島県安芸郡熊野町にある筆製造会社で筆づくりの基本を修業。現在筆の主流になっている、穂先に和紙を巻かない「水筆(すいひつ)」の工程を学んだ。
「幼いころから家業は知っていたが、父親から『跡継ぎ』の話は一度も言われなかった」といい、卒業まで筆を作ったことはなかった。しかし二十歳ころから書道関係者や周りの人の「声」が耳に入るようになってきた。
巻筆づくりで一番神経を遣うのは「芯立て」で、イタチやヤギ、シカなどの毛を見極めながら筆の形にしていく作業だ。芯立てで筆の良し悪しが決まるという。温かく見守る父親から時折「雑にしたらあかん。丁寧に、丁寧に。」と隠やかな口調の中にも厳しい檄が飛ぶ。
2022年9月、旧知の博士(書道学)根本知先生から連絡が入った。ドラマの題字を書くための筆と、出演者が使用する筆の製作依頼だった。奈良時代の筆は残っているものの平安時代の筆は現存しておらず、軸の長さや太さ、穂先の毛の材料を何にするかなど先生と協議が繰り返された。その結果、芯にイタチやウサギの毛を使い、回りをヤギの毛で作った筆が完成し、その年の暮れ40本を納品した。
「根本先生には感謝しかありません。巻筆が注目されるきっかけを与えてくださいました。これからも使いやすい筆を一生懸命作っていきます」
攀桂堂では、ドラマ内で使われている筆と穂先が同じ巻筆「紫微垣(しびえん)」(宮廷を意味する名前)を今年4月から販売している。
(取材・髙山)
●お問い合わせ
攀桂堂
高島市安曇川町上小川90-6
TEL:0740-32-0236
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