近江文学研究家 いかい ゆり子さん(湖南市在住)
随筆家・白洲正子(しらすまさこ)が紀行エッセーでその魅力を紹介する「かくれ里」。いかいゆり子さんは県内にあるかくれ里を訪ね歩き、近江に残る歴史や文化の素晴らしさを発信し続けている。
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随筆家・白洲正子(しらすまさこ)が紀行エッセーでその魅力を紹介する「かくれ里」。いかいゆり子さんは県内にあるかくれ里を訪ね歩き、近江に残る歴史や文化の素晴らしさを発信し続けている。
明治、大正、昭和、平成の四つの時代を生き抜き、日本の美をたたえ続けた白洲正子。彼女が吉野、葛城、伊賀、越前、滋賀のかくれ里を訪ね、その魅力を余す ところなく著した紀行文が「かくれ里」だ。いかいさんは国語の教師だった24年前、参加した研究会でこの本に出合った。
かくれ里とは人里離れた山奥の里のことだけをいうのではなく、町中でも街道から少し離れた場所にあって寂れてしまった古い寺社など穏やかで美
しい風土に包まれてひっそりと営みを重ねてきた人里のこと。そこには日本の古い歴史や信仰、伝承や習俗が伝わり、地元の人たちが代々守り続けてきた美術品が残されている。
いかいさんは読み込むほどにかくれ里のとりこになった。
自然と歴史が豊かな滋賀は数多くのかくれ里に恵まれていながら、ほとんど知られていない。
この魅力を人々に広めることに身を捧げたいと思うようになった。
子育ても落ち着き、教師生活30年を迎えた53歳のときに思いきって退職。白洲正子が訪れた県内のかくれ里を6年間かけて歩いて回り、紹介する記事を県文化振興事業団が発行する季刊誌「湖国と文化」に「滋賀のかくれ里」と題して連載した。
特 に奥琵琶湖の菅浦(長浜市)は、かくれ里にふさわしい美しく趣のあるところだった。須賀神社は清浄を保つために裸足で参拝するしきたりで、いかいさんも裸 足で体験してみた。時雨(しぐれ)の降る寒い日、空気がその場所だけ違うような気がした。足から「気」のようなものが上がってきてあとでじわじわと温かく なってきたという。
金勝山中にある狛坂磨崖仏(こまさかまがいぶつ/栗東市)は車が入れるところからさらに歩いて50分かかるが、6㍍もの高さの岩に何体もの仏像が彫られ、迫力ある美しさに驚いた。友人や講座のメンバーを連れて何度も訪れた。
かくれ里を支え続けている人にもたくさん出会った。中には夫を亡くして2人の子どもを抱えながら、檀家の人とともに全焼した寺を再興して守っている女性もいた。
2009 年からシニアの学び場である県レイカディア大学米原校の講師を務める。滋賀に関する本を600冊以上読みあさり、「おくのほそ道」の講座を開くために松尾 芭蕉(まつおばしょう)についても調べ、2年かけて「おくのほそ道」を旅した。芭蕉は近江を8回も訪れ102句詠んでいて、県内に61基の句碑がある。芭 蕉が「鳰の浮巣」を江戸で詠んでいたのを知って驚いた。
一連の取材の成果を元に4年前に「近江のかくれ里」、2015年4月に「近江の芭蕉」を出版。地域の公民館などで講座や講演会を開催して「近江の良さ」の語り部として活躍している。
「分かりやすい句碑の説明板を設置する運動もしています。今後は近江の能、文学碑、万葉集の碑などの本も書いてみたいと思っています」
(取材:2015年7月 鋒山)
●お問い合わせ
いかいゆり子
住所:湖南市岡出2‐3‐21
TEL・FAX:0748‐77‐4481
【近江の文学講座 開催予定】
2015年10月 6日(火) 石部まちづくりセンター
2015年10月21日(水) 守山市立図書館
サンライズ出版 「近江のかくれ里」1,728円
「近江の芭蕉」 1,944円
★探訪に便利な地図や交通案内付き
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