布絵作家 宮谷孝子さん
布絵作家
宮谷 孝子さん(66歳)
今回の素敵な人は布絵作家の宮谷孝子さん。作品展が開催された県立水口文化芸術会館でお話をうかがった。
滋賀県の観光ガイドやエリアガイド、グルメガイドなら滋賀ガイド。地域情報満載です!
宮谷さんの布絵は、使い込まれたハギレを縫い合わせ、細かい刺繍をほどこした風景画。会場ではたくさんの人がそのやさしい作品に見入っていた。
宮谷さんが布絵を始めたのは14年ほど前のこと。ふるさとの風景画で有名な原田泰治氏の絵を見て、身の周りのハギレで再現した事がきっかけだ。当時は、年老いた義母と病気のご主人の介護で心身ともに疲れ果てた毎日。子供服などを手作りすることが好きだった宮谷さんにとって、布絵は数少ない楽しみになった。できあがった作品をご主人が喜んでくれることもうれしくて、やがて作品作りは生き甲斐になった。
8年前、友人から展覧会を開くようにすすめられ、長浜で初めて作品を発表することに。「原作の作者・原田さんにお手紙を出したところ快く承諾していただけて、励みになりました」と宮谷さん。さらに展覧会のことが新聞でとりあげられ話題となり、あちこちから作品展の依頼が来るようになった。宮谷さんの出身地である岐阜県でも7年前から毎年開催されるほどの人気だ。
布絵の魅力はなんですか?とお聞きすると、「本当なら捨てられてしまうような古い布に、新たな命がふきこめること」と宮谷さん。つぎはぎだらけのものや、すりきれているもの。そういった布にこそ慈しみを感じるという。
宮谷さんのもう1つの代表作が円空仏(江戸時代のはじめに円空上人が彫った仏像)シリーズ。
これは宮谷さんの心に浮かんだ風景に円空仏を組み合わせたもの。見る人の心に訴えかける眼差しが印象的だ。取材中、一人の女性がある作品の前で涙ぐんでいるのに気付いた。亡くなったご主人を思い出したのだという。その作品は、宮谷さんがご主人を亡くした一番つらい時期に完成させたもの。ご主人への愛情がこめられた作品だったのだ。使い込まれた布だからこそ表現される深い思い。心を打たれずにいられなかった。
「原田さんからは、がんばって下さいと励ましの言葉をいただきました。ですからこれからも、わたしの作品を見て喜んでくださる方のためにも、ひと針ひと針に思いを込めて、一人こつこつと縫い続けていきたいです」と宮谷さん。体に気をつけていつまでも素敵な作品を作って欲しい。
(取材・福本)
本ページの情報は作成時のものであり、変更されていることがあります。あらかじめ御了承ください。