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掲載日: 2006.06.7

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株式会社福井弥平商店 福井 毅さん

株式会社福井弥平商店
福井 毅さん(34歳)

今回の素敵な人は、「畑の棚田」産コシヒカリを100%使った純米吟醸酒「萩乃露 里山」を造る(株)福井弥平商店の専務・福井毅さん。酒造りを通じて「日本の棚田百選」に選ばれた美しい景観を守ろうとガンバッテいる。

「日本の棚田百選」に選ばれたものの…

高島市の「畑の棚田」は日本の原風景と呼ばれるほど美しく、1999(平成11)年には県内で唯一「日本の棚田百選」に選ばれた。
しかし、毎年増え続ける観光客とは裏腹に棚田特有の厳しい農作業や生産者の高齢化により休耕田が増加している。これらの棚田をいかに維持・管理していくかが課題となっている。

大手メーカーから創業250年の老舗酒店へ

福井さんは7年前まで大手酒造会社に勤務していたが、退社して奥さんの実家である高島市の(株)福井弥平商店に入り、酒造りを担っている。同社は創業250年の老舗。福井さんは地域とのつながりを大切にする中で、美しい景観を守るために自分に何ができるか考えるようになったという。
「休耕田を増やさないためには生産者の負担を減らすことが大切です。棚田のコシヒカリを使った酒を造ることで、少しでも経済的貢献ができるのではないか」と考え、福井さんは棚田産コシヒカリを100%使った酒造りに挑戦することにした。
コシヒカリは酒造りに向かない品種のため容易なことではなかった。しかし、試行錯誤の末にようやく「萩乃露 里山」を完成させ、3年前から春には瑞々しい味わいの「豊作祈願しぼりたて生」を、秋には深みのある味わいの「収穫記念秋あがり原酒」を販売するようになった。いずれもすっきりとやさしい飲み口が評判だ。
福井さんは「田植えや収穫期に販売することで『畑の棚田』に目を向けるきっかけとなってほしい」と話す。

棚田オーナー制度がスタート

「日本の棚田百選」に選ばれたことをきっかけに、高島町(現高島市)が平成12(2000)年から「棚田オーナー制度」を始めた。県内外から棚田のオーナーを募り、田植えや稲刈りといった農作業を手伝ってもらうことで休耕田を減らそうという仕組みである。
一昨年からは(株)福井弥平商店も加わって「畑の棚田 酒オーナー制度」が始まった。農作業の他に、収穫した米による酒造りを見学し、翌年の春に出来あがったお酒を受け取るという仕組みだ。
これは「棚田オーナー制度」に当初から関わる高島市役所勤務の林典男さんの薦めで実現した。福井さんの「酒造りを通じて、人と人とのつながりを大切にしていきたい」という願いが込められている。
取材日は70組200名ほどのオーナーが集まり、手作業による田植えが行われていた。県外からの参加者が多く、楽しそうに作業する様子が印象的で、日本の美しい景観を守る姿に感動した。
(取材・竹末)

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