ピアニスト 上田 明美さん(33歳・大津市在住)
6月14日、ベートーベンをテーマに、大津市のびわ湖ホールでリサイタルを開くピアニストの上田明美さんが今回の素敵な人。リサイタルの準備に忙しい合間をぬってお話を伺った。
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6月14日、ベートーベンをテーマに、大津市のびわ湖ホールでリサイタルを開くピアニストの上田明美さんが今回の素敵な人。リサイタルの準備に忙しい合間をぬってお話を伺った。
上田さんは4歳から音楽教室に通い、小学校高学年で本格的にピアノのレッスンを始めた。レッスンが厳しく、一時期は挫折しそうになった。親から「それならやめていいよ」と言われたが、負けず嫌いの性格で、逆に頑張ったという。京都市立芸術大学音楽学部に進み、ピアノを専攻した。コンクールに落選するなど、道のりは平坦ではなかったが、持ち前の粘り強さを発揮し、「ピアノに関係のある仕事をしていきたい」という思いを捨てる事はなかった。00(平成12)年、転機が訪れ、奨学生としてドイツ国立マンハイム音楽大学芸術家育成課程への留学のチャンスを手にした。
留学先のドイツは日本と様子が異なり、「たとえ演奏が完ぺきでなくても、曲のすぐれた部分を引き出すにはどうするか?」ということに指導のポイントが置かれていた。この教育方針が上田さんにフィットし、才能を引き出すことになった。「留学当時は楽しくて仕方なかった」となつかしそうに振り返る上田さん。毎回、レッスンを心待ちにして練習に打ちこんだ。ヴァレンティノ市国際音楽コンクール(イタリア)で第1位を獲得するなど、輝かしい成績を修めた。
上田さんはコンクールなどで外国を訪れた際、必ず美術館や遺跡を訪れるという。「素晴らしい美術品を見ると、感性が刺激され、どこからともなくインスピレーションがわいてきます。また、現地の人や風土に触れることで、その国に生まれた作曲家の“音楽の源”を肌で感じることができてうれしい」と言う。05(平成17)年に留学を終え、現在、石山高校で非常勤講師として指導するほか、さまざまな演奏家と共演するなど多方面で活躍中だ。
びわ湖ホールでのリサイタル「迸るベートーベン」では、上田さんが“原点”と断言するベートーベンの曲だけを選定し、「月光」「熱情」や最後のピアノソナタとなった「第32番」などを弾く。「ソナタ第32番は、情熱や力強さだけでなく、死に近づきつつあるベートーベンが人生を振り返る奥深さを感じます。彼の曲には、“ここからここまでクレッシェンド(だんだん強く)”などと、細かく指示があり、“なぜこの指示なのか?”と悩みながら楽譜とにらめっこの毎日です。作曲家の思いを楽譜から引き出すのは演奏者の使命であり、喜びです」と笑顔で語ってくれた上田さん。偉大なるベートーベンの曲に正面から挑む演奏が今から楽しみである。(取材・瓜生)
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