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掲載日: 2010.02.3

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檜皮葺・柿葺士 岩崎 長蔵さん (59歳・長浜市在住)

長年、檜皮葺・柿葺士として重要文化財の屋根の修復に当たってきた岩崎長蔵さん(59)。

先代の父・岩吉さん(故人)に次ぎ、現代の名工(平成21年度)を受賞、親子2代での栄誉となった。

樹皮片で生み出す  優美な曲線と重厚感

檜皮葺とはヒノキの樹皮を使って屋根をふく日本独自の屋根工法。柿葺とはヒノキ、サワラ、スギ、エノキなど水に強い木の薄板で屋根をふく工法のことである。中でも檜皮葺は、古くは大和時代から用いられ、屋根をふく最も格式の高い工法として出雲大社本殿、京都御所紫宸殿、清涼殿など、多くの寺社や伝統的建物に使われてきた。

薄くはいだ樹皮を長さ約75㌢、短辺約15㌢の細長い扇形に切り、少しずつずらしながら重ねて屋根をふいていき、竹釘で固定する。独自の重ね方によって、屋根に優美な曲線と重厚感が生まれるのが特徴だ。

樹木を伐採しないで樹皮だけをはいで使うため、自然環境と共存できる日本らしい工法である。ただ、最近では良質の樹皮の入手が難しいことや、樹皮を採取する原皮師や屋根をふく檜皮葺士が減ったこともあり、伝統の技の伝承が危ぶまれている。

岩崎さんは子どものころから作業場が遊び場で、自然に家業を手伝い無意識で技術を習得していた。父と同じ職業に就くことに何の迷いもなく、18歳で仕事とした。2年後には父が表舞台から身を引き、6代目として家業を継いだ。

以来40年余、200件以上の屋根の修復を手がけ腕を磨いてきた。

1本の包丁と 微妙な手の技だけで勝負

檜皮葺の難しさは、断片の切り出し方や重ね方がほんの少し違うだけで、完成した屋根の曲線の美しさや重厚感が全く異なってくる点だ。雨漏りを防ぐ本来の機能はもちろんのこと、檜皮葺ならではの美しさを出せてこその工法だけに、長年の経験から得た微妙な手の技が勝負となる。

道具はたった1本の包丁。すべてが人の手による作業なので、1日に畳1枚ほどの屋根しかふけない。屋根が大きいと資材も時間もかかる。

水路しか交通手段がなく島内は石段ばかりの竹生島・法厳寺での作業では、資材の運搬に手間がかかったこともあり、屋根をふき終えるのに3年かかったという。

岩崎さんは定規がなくても切り出す檜皮のサイズがそろう。長さ、厚さ、幅を指先の感覚で覚えているからだ。樹皮片を重ねながら完成した屋根の姿が目に浮かぶという。

この匠の技が評価されて平成21年度現代の名工受賞となった。父親の岩吉さんに続く親子2代の受賞である。

伝統を受け継ぎ次代に伝えたい

竹生島・法厳寺の前回の屋根葺きを行ったのも父・岩吉さん。こちらも親子2代にわたる。

「檜皮葺職人は腕一つで生きていける、やりがいのある仕事です。法厳寺の次の修復を息子がしてくれるといいなぁと思ってます」と目を細めた。現在、長男の剛さん(32)は岩崎さんと共に檜皮葺士として働いている。頼もしい7代目だ。

(取材・高原)

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