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掲載日: 2010.02.24

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ファブリカ村 北川 陽子さん (48歳・東近江市在住)

麻織物の産地として発展してきた旧能登川町で、絣の技術を生かした作品を作り続けている北川陽子さん。

昨年10月、次世代に日本の手仕事をつなげていきたいと、カフェとショップを併設したものづくり体験の場「ファブリカ村」をオープンさせた。

すてきなヒト・コト・モノに出合える場

ファブリカ(Fabrica)とは工場を意味するスペイン語。その名のとおり、地場産業の麻の織物工場として50年間操業してきた北川織物工場をショップやものづくり空間、カフェ、ギャラリー、ステージを備えた場所に生まれ変わらせている。

昭和初期の織物の機械やペチカとともに、現代の作家が作ったテーブルや椅子、照明、器などを展示している。古いものと新しいものが入り交じるユニークな空間で、染めや織物の体験会、さまざまなものづくりのワークショップ、ライブ、展覧会などのイベントが開かれている。

きっかけは、15年ほど前に海外から安価な製品が入るようになり、日本人の生活スタイルが変わって「工夫しなければ売れない」時代になったこと。ずっと父の工場を手伝ってきた北川さんだったが、10年前に独自の麻製品のショップ「絣工房 ファブリカ」をここにオープンした。8年前に父親が亡くなった後も染物の体験教室を開くなど伝統を守る活動を続けてきた。だが、もっと多くの人に絣や手仕事の素晴らしさを伝えようと、工場を「すてきな人、すてきなこと、すてきなものに出会える空間」に生まれ変わらせることを思いついた。老若男女が集い地元の人に愛される場所にすることが、本物の絣の良さに触れて知ってもらうことにつながると思ったからだ。昨年、造形作家・茗荷恭介さんのアドバイスを受けて1年かけて改造、ファブリカ村が誕生した。

奥行きある色合いと深い風合いが魅力

北川織物工場が作り伝えてきた「絣」とは、経糸、緯糸、またはその両方を染め分けて絣糸を作り、織り合わせることで柄を表現する先染め織物のこと。

見た目の派手さはないが、奥行きのある色合いや糸を重ねる人の高度な技があって初めて可能になる本物の風合いが魅力。
そんなものづくりのこころや手づくりの喜びを伝えていくのが北川さんの願いだ。

日常こそいいものを

北川さんが絣の布を織り、妹の順子さんがデザインして服や小物などに仕上げる。

ファブリカ村では完成した製品が買えるのはもちろん、さまざまなワークショップに参加して自分で作ることにも挑戦できる。おいしいコーヒーを飲むためや、ちょっといい音楽を聴きたくて立ち寄るのも楽しい。

「日本のものづくりを守るためにも、価格が多少高くても、本物、いいものこそ非日常ではなく日常に使ってほしいですね」

日常の中にちょっとぜいたくな暮らしを与えてくれるすてきな場所が一つ見つかった。

(取材・鋒山)

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