画家 野田 幸江さん (甲賀市在住・32歳)
甲賀市水口町春日の農業倉庫に豊かな自然を描いた壁画がある。春日で生まれ育った画家の野田幸江さんの作品で、やさしいタッチのふるさとの風景画は見る人の心を癒やしてくれる。
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甲賀市水口町春日の農業倉庫に豊かな自然を描いた壁画がある。春日で生まれ育った画家の野田幸江さんの作品で、やさしいタッチのふるさとの風景画は見る人の心を癒やしてくれる。
春日営農組合の堆肥舎の壁面に全長40㍍にわたって描かれていて、淡い色合いはどこか懐かしさを感じさせる。
野田さんが約2カ月半をかけて制作し、09年秋に完成させた。今年7月にオープンした同組合の直売所にも野田さんの作品が飾られ、道行く人の目を引いている。見ていると心が癒やされる独特の作風に特徴がある。
野田さんが春日の風景画を描き始めたのは3~4年前。それまでは鉛筆で精密に描く幻想画が中心だった。宗教画家とも評された彼女の作品には、裸体の男女が連なる絵など妖しく深い精神世界が描かれていた。
子どものころから絵を描くことが好きだった。自分の思いを絵で表現するのは当たり前のことで、教科書やノートの空白にはいつも落書きをしていた。
東京の短大を卒業後は、イラストレーターのアシスタントになったが、「自分の絵でやっていきたい」と語学勉強をかねて単身ニューヨークへ渡った。帰国後、02(平成14)年に初の個展を開き、その後も年に1回のペースで個展を開催するようになった。
06年、弟が脳腫瘍で余命半年と宣告を受けた。
野田さんは看病に専念して、その合間に自宅周辺をスケッチするようになった。豊かなふるさとの風景を見つめ直し、水彩画でやさしく表現してみたいと思ったからだ。
家族の献身的な看病もあってか、弟の命をそれから1年半まで延ばすことはできた。
「作風が全く変わったとよく言われますが、描きたいと思うものを表現していることに変わりはありません。弟の病気を乗り越え、私の中にある風景と身の回りの風景が一致してきたのかもしれません」
見るものを穏やかな気持ちにさせてくれる風景画は地元の人にも好評だ。
野田さんには大きな夢がある。春日を壁画の町にすることだ。
「集落内に私が描いた壁画が4カ所あるのですが、もっと増やして壁画でいっぱいの町にしたいですね」
自分の家の塀に描いてほしいと申し出る人も現れているという。
現在は9月18日から近江八幡市で開催される「BIWAKOビエンナーレ2010」に出展する作品づくりに没頭している。今回はヨシ紙をカンバスにした5㍍の大型作品など十数点を出展する予定。イベントに先がけて行ったワークショップでは、子どもたちと一緒に屋形船に絵を描いた。会期中はこの船が八幡堀を運航する。
(取材・福本)
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