御菓子司 金時堂 山本 伸一さん (大津市在住・60歳)
山本伸一さんは90年も続く老舗和菓子店「金時堂」の三代目。堅田が発祥地とされる落雁の製法を代々引き継ぎ、今も多くの人たちに愛されている。
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目で楽しみ、口で味わい、心でいただく……和菓子の醍醐味はここにある。
金時堂の看板商品、落雁もその典型だろう。
近江八景の一つ「堅田の落雁」にちなみ、琵琶湖に浮かぶ浮御堂とその上を雁が優雅に飛ぶ美しい風景を表現、まずは手に取った人の目を楽しませる。
そして口に含む。砂糖の中でも最高級の和三盆の上品な甘さがゆっくりと広がり、思わず頬が緩んでくる。
油脂を使わず植物性の原料と炭水化物が中心。洋菓子に比べて低カロリーで体に優しいのもうれしい。
金時堂は1923(大正12)年、かつて湖上交通の拠点として栄え、今でも風情のある町並みが残っている堅田の町の一角に誕生した。
当時、堅田だけで12軒の和菓子屋があり、そのうちの2軒で落雁を作っていた。競争が激しく、自転車で近江舞子あたりまで売りに行っていたという。
以来約90年。地元で取れた米や小豆を使うなど地産地消を心掛け、昔ながらの製法を守って「伝統の味」を伝えてきた。
山本さんは高校を卒業後、5年間京都で修業を積んだ。京都の和菓子は自分の知る和菓子と違い、とても上品で驚いたという。めきめきと腕を上げ、修業中から京菓子協同組合研究会の優秀賞や優良賞を受賞した。その後も全国菓子大博覧会で有効金賞や総裁工芸文化賞を受賞、その技術は高く評価されている。現在は父・時男さん(87歳)、息子の伸吾さん(32歳)と共に3世代で営んでいる。
「人の一生には喜びや悲しみなどさまざまな節目があります。そのときに欠かせないのがお菓子。うれしいときは喜びを分かち合い、悲しいときは心を慰めてくれる……お菓子は人の気持ちを伝え、心でいただくものです」
そんな心を伝えるため、地域の人々との関わりも大切にしている。
地元中学校の職場体験を受け入れ、高校の「堅田探訪」の授業にも協力している。休日には公民館で和菓子作り教室を開催するほか、地元・成安造形大学の学生新聞にもレシピを載せたり取材に応じたりして協力している。
(取材・澤井)
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