農業家 毛利 有宏さん (東近市在住・42歳)
娘の食物アレルギーをきっかけに農業に関心を持ち、4年前に大阪から滋賀へ移住して専業農家として人生を歩み始めた毛利有宏さん。
有機野菜を育てながら、自身が農家になるまでに感じた就農の壁をなくしていきたいと、新規就農者の支援活動にも力を注いでいる。
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娘の食物アレルギーをきっかけに農業に関心を持ち、4年前に大阪から滋賀へ移住して専業農家として人生を歩み始めた毛利有宏さん。
有機野菜を育てながら、自身が農家になるまでに感じた就農の壁をなくしていきたいと、新規就農者の支援活動にも力を注いでいる。
「高い空、澄んだ空気、体全体で四季を感じながら仕事ができる。会社勤めで飛び回っていたころには感じられなかった充実感です」
30代前半までは自分が農業をするとは考えてもみなかった。きっかけとなったのは娘の食物アレルギー。
「安全な食べ物を食べさせたいが、高価だから毎日は無理……。だったら自分で作ろう」と考え、畑を借りて週末に有機野菜作りを始めた。
そんなとき、農家の人から言われた一言で人生が変わった。
「農業は若い人がやることじゃないよ」
農家の平均年齢が65歳と知り、20年後の食環境が不安になった。やる人がいないなら「自分がやろう」と心に決めた。早速、滋賀で広い農地を借り、3年間大阪から通って農作業を続けた。
農家人口は減り続けているが、農業に興味を持つ若い人はたくさんいる。しかし、農業で生活していくには大きな壁がある。農地もなければ、知識や技術もない。作った農産物を売る場もなく、家族が生活していけるかどうかも分からない。「農業=家族ぐるみ」の先入観を捨てて、「職業」としての就農を考えようと、08年に会社を退職して、東近江市に「株式会社晴れやかファーム」を設立した。集まったスタッフは4人で、中には「給料はいらないので農業を教えてください」とバッグ一つを手に訪ねてきた若者もいた。
「やはり農業に関心を持っている若い人は少なくないのだ」と意を強くしたという。
毛利さん自身、家族単位での移住は難しいと判断し、単身赴任している。週末・週初に大阪の自宅と滋賀とを行き来し、娘に都会と田舎の両方の生活を楽しませている。
今年6月から国の基金訓練制度を活用して新規就農者を対象にした訓練校を開校した。生徒は30代を中心とした男女13人。東京、神奈川、神戸など県外の人が大半だ。中には震災後に関東から母子だけで滋賀へ避難してきた人もいる。「放射能におびえる生活が嫌になり、何か目標を持ちたくて参加しました」訓練校では有機農業の実践を中心に指導する。卒業後すぐに就農できるよう、借りる農地や住む家の手配、作物の買い取りなどフォローにも力を入れている。
生産者と消費者の壁をなくしたいと「ベジタブルパートナーシップ」制度も始めた。これは消費者と生産者の直接のかかわりを大切にした野菜直販の仕組みで、消費者と意見交換しながら野菜を栽培して、年4回新鮮野菜を届けるという仕組みだ。うち2回は畑での収穫体験もしてもらえる。
今後は、安全な食物を食べてほしい赤ちゃん向けに離乳食の加工や、障がい者が作業の一端を担う新たな就農スタイルも模索しはじめている。京都三条商店街に常設の直売店があり、毛利さんの野菜が手に入る。
(取材・福本)
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