日野町有害鳥獣被害対策協議会 日野町猟友会 齊田 由紀子さん(日野町在住・29歳)
全国的にシカやイノシシ、サルなどの野生動物による農作物被害が深刻化している中、この対策に頑張っている齊田由紀子さん。
自らも銃を手にして捕獲に奔走すると同時に、人間の都合で奪った命はムダにしたくないと、シカ肉の利活用に力を注いでいる。
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全国的にシカやイノシシ、サルなどの野生動物による農作物被害が深刻化している中、この対策に頑張っている齊田由紀子さん。
自らも銃を手にして捕獲に奔走すると同時に、人間の都合で奪った命はムダにしたくないと、シカ肉の利活用に力を注いでいる。
最初は単なる事務員として入社した齊田さん。一般企業での販売・営業職から日野町有害鳥獣被害対策協議会の事務局に転職したのが4年前。出社2日目、早速、畑の柵に引っかかったシカをナイフで殺す役割が回って来た。別の日にはシカの解体現場にも立ち会うことになり、面食らった。
齊田さんは日野町に住んでいながら、イノシシ、シカ、サルなど有害獣による被害額が年間2000万~2500万円にもなることを知らなかった。特に多いのはシカ。
元々、シカは強い動物に食べられる宿命を背負っているので繁殖力が強い。一昔前までは猟師がいてイノシシやシカを食べていたが、牛、豚、鶏肉の流通が盛んになり、イノシシやシカの肉は需要がほとんどなくなってしまった。その結果、生態バランスがくずれているのだ。
「残酷!」……最初は駆除や解体の現場に立ち会ってこう感じた。しかし、私たちが日ごろ口にする牛肉、豚肉も解体していることに違いはない。スーパーなどの店頭でパックに入って並べられているので実感がないだけなのだ。
昔、農村では客が来ると庭先の鶏を殺してもてなした。魚や野菜も同じ命、地球上の生きとし生けるものは全て「他の命を食べて命をつないでいる」。他の命をいただくのは真剣で神聖な営みだ。だから、食事の前には「食べます」ではなく「いただきます」と手を合わせる。「おかげで自分の命がつながります、ありがとうございます……」と感謝して食べるのだ。残酷なのは鳥獣を殺すことではなく、食べずに廃棄すること。自分達の命をつなぐために奪った命をムダにすることではないか。奪った命は最後まで感謝していただく……これが同じ生命体同士としての礼儀だ。
生態バランスを取り戻すためにも、駆除したシカやイノシシの肉を昔のように感謝して食べようと、09(平成21)年に日野町に解体処理施設「獣美恵堂」が開設された。
まず、鮮度や衛生管理を徹底し、全国カレーチェーン店「CoCo壱番屋」に売り込んだ。
さらに、この会社の滋賀地区代表に給食現場に来てもらい、小学校の給食にシカ肉を使えるように指導を受けた。子どもたちからも人気を得られるようになった。
一方、フランス料理ではシカ肉が使われることに着目し、フランス料理店にシカ肉を卸すルートを開拓。今では「日野のシカ肉は臭みがなく、しかも甘みがあっておいしい」と評判を得ている。この成果を猟友会の人たちにも実感してほしいと考え、商談現場にもできるだけ同行してもらうようにしているという。
また、シカ肉を気軽に食べてもらうために缶詰やソーセージなどに加工する一方、シカ肉バーガーやシカ肉の串カツをイベントで販売するなどの努力も続けている。
齊田さんは昨年、第1種銃猟免許を取得した。事務局員の枠を超え、捕獲にも積極的に参加している。
(取材・福本)
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