あけぼのパーク多賀 館長 小早川 隆さん(彦根市在住・63歳)
大好きなことを一生の仕事にしたい。
誰もが願うこんな夢を実現し、好きな地学(古生物学)一筋の人生を歩んで来たあけぼのパーク多賀館長の小早川隆さん。高校教諭として地学を教えながら古代の「アケボノゾウ」の化石発掘に関わり、退職後も化石の発掘を記念して設立された同館の館長として地学と科学の面白さを語り続けている。
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大好きなことを一生の仕事にしたい。
誰もが願うこんな夢を実現し、好きな地学(古生物学)一筋の人生を歩んで来たあけぼのパーク多賀館長の小早川隆さん。高校教諭として地学を教えながら古代の「アケボノゾウ」の化石発掘に関わり、退職後も化石の発掘を記念して設立された同館の館長として地学と科学の面白さを語り続けている。
「あのとき、パワーショベルのオペレーターさんたちがほかの人だったら、世紀の発見はなかったかもしれません」
自ら来館者に解説することも少なくない小早川さん。アケボノゾウの化石発掘の話をするときの目は少年のようだ。
1993年のこと。高校で地学の教師を勤めながら、「堆積環境研究会」の一員として、古生物調査に夢中だった。
「この辺で何かが出そうだ」と、勘を働かせて工業団地造成現場を歩いていた日、パワーショベルのオペレーターから声をかけられた。「この前、ここで大きな骨が出ましたよ」。ショベルに木の根のようなものがひっかかったというのだ。
たまたま、その作業員たちには化石の知識があり、骨を捨てないで地元の研究家に預けていたのが幸いした。小早川さんたちは早速、調査隊を結成して発掘に取り掛かり、これが世紀の発見につながったのである。
アケボノゾウは今から約250 ~70万年前に生息していた古代のゾウ。その化石が7割もそろって出土したのは日本では例がなかった。復元された化石は当時の自然環境を示す示準化石として、今では「多賀標本」と呼ばれており、中学の教科書にも載っているという。
小早川さんたちは5年後にも、多賀町中川原の芹川河原で約3万年前のナウマンゾウの巨大な牙の化石を発見している。
子どものころは、星空が大好きな天文少年だった。気象や自然全般に興味があり、台風がやってくるとワクワクしていた。高校では地学に興味を持ち、地学に関係した仕事がしたいと思っていた。大学は理学部ではなく教育学部へ。
学ぶ分野が特定される理学部と違って、教育学部なら理科全体を幅広く学べる。これが幸いし、アケボノゾウの発掘など “手応えいっぱいの学問人生” につながったと言う。
指導を受けた教授の専門が鉱物だったので、古生物学にも興味を持つ大きなきっかけとなった。
「それまでは宇宙や気象など、上ばかり向いていました。しかし、視線がいつの間にか下向きになり、『地面』に関心を持つようになりました」
卒業後、中学でしばらく理科を教え、その後、高校の地学の教師になった。生徒に知識を与えるだけでなく、好奇心に火をつけ、自分が果せなかった夢を卒業生が実現してくれるという教師の醍醐味を知ったのだ。
通り一遍の教師では面白くない。自然科学の面白さを子どもたちに伝えるには、まず「自分がやること」、そして「それを楽しむ姿を子どもたちに見せること」
が大事だと考えていた。授業では、発掘した本物の化石を教室へ運んで生徒たちに見せた。
「あけぼのパーク多賀では、地学だけでなく動物や天文など、自然科学全般が対象です。遠足で博物館を訪れる子どもたちはもちろんですが、出前授業などで地域の子どもたちにも科学の面白さを伝える仕事はとてもやりがいがあります!」
難しい科学の話も、小早川さんが話すと分かりやすい。あっという間の楽しい取材だった。
(取材・越智田)
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