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掲載日: 2013.03.27

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川柳家 徳永 政二さん(守山市在住・67歳)

犬小屋の中に入ってゆく鎖
ありがとうございましたと母の下駄(げた)
花引くと小さな虫がついてくる

川柳家・徳永政二(とくながせいじ)さんの「感性でつづられた川柳」が話題になっている。
独特の心象世界を詠み上げ、写真と川柳を合体させたフォト句集を送り出し、川柳界に新風を吹き込んでいる。

人生変えた一冊の句集

びわこ番傘川柳会の会誌
『川柳びわこ』のイラストも手がける

「川柳」は俳句と同じ五七五で詠まれる短詩。季語や切れ字などの「約束ごと」がなく、「人の暮らし」「思い」などを題材に、わずか17音字でユーモア、風刺(ふうし)、機知の面白さを表現する文芸である。だが、徳永さんの川柳はひと味違う。
ユーモア、風刺、機知にとどまらず、うれしいこと、哀(かな)しいこと、その時々の思いを表現する「感性でつづられた川柳」だ。
元々、徳永さんは「言葉の人」ではない。
絵が好きでグラフィックデザイナーとして活躍していた。40歳のとき、図書館で何気なく一冊の川柳句集を手にした。
「面白いことを書く人がいる!」と感動。著者である「びわこ番傘川柳会」所属の笠川嘉一(かさかわかいち)さん(守山市在住)に電話をかけた。
以後、毎月の句会に参加し、言葉の世界に熱中するようになった。現在、その「びわこ番傘川柳会」で編集の仕事をしている。
「心の中を言葉で表現することは自分をみつめることでもあります。精神的につらいことがあっても、川柳を作ることによって乗り越えられることに気づき、夢中になっていきました」

驚きと感動のフォト句集

2011年、12年に写真と川柳を組み合わせたフォト句集『カーブ』『大阪の泡』を立て続けに出版した。出版社・あざみエージェントの冨上朝世(とかみあさよ)さんが企画し、写真家・藤田(ふじた)めぐみさんとのコラボレーションだ。時代の感性だけではない彼女の写真の奥深さに感動した。

一本の木から汽笛を聴いている
よかったねよかった帽子ぬぎながら
入口は夢で出口もまた夢で
まっすぐはあかんやっぱりおもろない
そうですねそれは涙に近いもの
生きているみんなころがるようにして
(『カーブ』『大阪の泡』より)

「句と一見関係ない写真が横にあったりして、秘められたものを想像できる面白さがあります。人によって解釈が違ってもいいんです。書かれていない部分を自由に想像し、意図しないものが現れる驚きを楽しんでください」

街や自然から言葉を体感

『大阪の泡』より

徳永さんが描くイラスト

徳永さんは、街や自然の中を散策しながら言葉を手に入れる。机に向かったままだと言葉を体感できないからだ。近くの街や自然が残っている河原を歩きながら、浮かんでくる言葉を書きとめていく。
「こういう川柳もあるんだ、面白い、のぞいてみたい、自分でも書けるんだと思っていただければ幸いです。若い人や難儀を抱えている人、目の前に壁を感じている人に川柳はおすすめです」
独特の心象世界が評価され、川上三太郎賞や川柳Z賞「風炎賞」などを受賞している。今年の秋には3冊目のフォト句集を出版する予定だ。
(取材・鋒山)

 

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