國枝 啓司さん(56歳)、健一さん(31歳)
新しいバラの品種づくりに30年以上取り組んでいる守山市のバラ園「ローズファームケイジ」の國枝啓司(くにえだけいじ)さん。近年は息子の健一(けんいち)さんと力を合わせ、新しい和風のバラの品種「和ばら」を開発している。
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新しいバラの品種づくりに30年以上取り組んでいる守山市のバラ園「ローズファームケイジ」の國枝啓司(くにえだけいじ)さん。近年は息子の健一(けんいち)さんと力を合わせ、新しい和風のバラの品種「和ばら」を開発している。
啓司さんがバラの育種を始めたのは「グラハムトーマス」というつる性の黄色い品種に出合ったことがきっかけだった。
農家に生まれ農業短大を卒業後、「家業を手伝うだけでは面白くない。何か新しいことに挑戦してみたい」と考えていたときにこのバラに出合って一目ぼれしてしまった。
こんなバラを自分の手で作り出してみたい……。早速、育種に関する本を読みあさった。その道に詳しい人から教えを請い、ヨーロッパ視察旅行にまで出かけ、勉強を重ねた。
そんな苦労が実り、10年前に自分のバラ園を設立した。
バラ園は自分の名前をとって「ローズファームケイジ」と名付けた。
バラの育種方法は「交配によるもの」「つぎ木によるもの」「人為的な突然変異によるもの」などさまざまだ。まず作りたい花をイメージし、芽を付けた品種の雄しべと雌しべを交配させ、新しい品種づくりを進めていく。しかし、受粉が成功する確率は3割ほど。発芽する確率は1割に満たない。その中から商品化できるのはわずか一つか二つと厳しい。
種をまけば必ず発芽するとは限らない。発芽しても花が咲かないこともしばしばで、結果が出るまでに最低3~4年はかかるという。忍耐を必要とする仕事だ。
「バラを育てるというよりは、バラが育つ環境を整えるというべきでしょう」と啓司さん。
栽培の手順はまず、牛フンなどの有機物を土に混ぜて「土づくり」から。土の中には多くの微生物がいるので、この微生物が呼吸を盛んにし、炭酸ガスを出す。この炭酸ガスと太陽光で光合成が進み、バラが成長していく。環境を整えることで生命の力が湧いてくるのだそうだ。
近年、啓司さんの努力が実を結び、「和」の味わいを持つ「和ばら」の開発に成果が現れてきた。
「今年がダメだったらまた来年!と、何度決意を新たにしたことでしょうか」と啓司さん。
「美咲(みさき)」と名付けられた品種は100枚以上の花びらをびっしり付け、見るからに繊細さを感じさせる半面、香りはふくよかで思わず頬擦りしたくなるほど。
このほか「友禅(ゆうぜん)」「小春(こはる)」「雅(みやび)」など、数多くのバラの育種に成功した。それぞれのバラは、いずれも啓司さんが狙いを定めた通り日本情緒が漂う。付けられている名前も和名だ。
それぞれの品種が持つ情景を元に、息子の健一さんと相談しながら名前をつける。4人の孫の名前もバラの名前になっていてほほ笑ましい。
健一さんは大学卒業後、しばらくはサラリーマンだったが、バラの仕事の面白さに目覚め、2006年からこの仕事に加わった。
若い感覚で市場の流れを読み、商品開発のプランを立てている。
ホームページも開設し、農園見学ツアーも企画。守山市にあるあまが池プラザ内のカフェ「SiEMA CHERiE(シェマシェリ)」でブーケ作りのレッスンも行っている。
「育種から販売プランまで、まだまだやらなくてはいけないことがいっぱいです」と健一さん。
今年の秋には39品種の「和ばら」が新たに見られるといい、多くのファンが今から首を長くして待っている。
(取材・澤井)
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