(株)タイナカ 代表取締役社長 田井中 敏己さん(東近江市在住・41歳)
近江ヨシを加工して80年。すだれや琵琶湖特産の建材ボードなどを手がけてきた(株)タイナカでは近年、伝統住文化を守るためにヨシによるかやぶき屋根の施工に力を注いでいる。古い伝統に新しい感覚で取りくみながら東奔西走する三代目社長・田井中敏己(たいなかとしみ)さんの奮闘ぶりを取材してみた。
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近江ヨシを加工して80年。すだれや琵琶湖特産の建材ボードなどを手がけてきた(株)タイナカでは近年、伝統住文化を守るためにヨシによるかやぶき屋根の施工に力を注いでいる。古い伝統に新しい感覚で取りくみながら東奔西走する三代目社長・田井中敏己(たいなかとしみ)さんの奮闘ぶりを取材してみた。
かやぶきとは「ススキ」「チガヤ」「稲ワラ」などで屋根をふく昔ながらの工法。
蒸し暑い夏を涼しく過ごすために日本の建築は開口部を大きく取り、雨を防ぐために屋根を重要視してきた。屋根は建物の形づくる大きな要素であり、「かやぶき屋根」や「瓦屋根」は日本の原風景の中で大切な役割を担ってきた。
2006年、田井中さんは三代目として経営を引き継いでから、近江ヨシを使うかやぶき屋根に力を注いでいる。
「かやぶき屋根の歴史は長く、古くから建物の重要な役割を担ってきました。夏涼しく冬温かく、省エネ効果も抜群です。特に、一昨年あたりからは節電意識の高まりと共に、すだれの販売が伸び、かやぶき屋根の注目度も高くなっています。かやぶきの貴重な技術を後世に伝えていけるように頑張っています」
ヨシで屋根をふくには高い技術が求められる。
「創業80年の伝統と、ベテラン職人の存在がありますので、ヨシでのかやぶきが可能なのです。勤続60年を越え、80歳を過ぎた職人さんもいます。祖父のころから付き合いのある加工工場も力を貸してくれます」
刈り取ったヨシはすぐに使わず、何年も寝かせ、独特の色と風合いが出てきたところで加工していく。
子どものころ、田井中さんの遊び場はヨシの作業場だった。父親が運転するトラックの助手席に乗って仕事についていった。18歳を過ぎてからはアルバイトとして手伝ったが仕事は教えてもらえず、「目で盗め」と言われた。ものづくりや絵を描くことが大好きで、自然の素材が美しく生まれ変わっていくのが面白く、見よう見まねで覚えた。
最近、田井中さんはヨシを使った屋根のふき替え工事で全国を飛び回っている。日本各地の寺社や文化財、民家などのかやぶき屋根の工事を多いときは年間10件以上もこなしている。工期は小さな民家でも1~2カ月、お寺だと4~5カ月はかかる。祖父の代から3回も屋根のふき替えをしている寺院もある。
屋根の上での作業なので夏場は特に厳しく、暑さと忙しさで痩せ細ったこともあるという。
「『かやぶき屋根を守ってくれる人がいることはありがたい。いつまでも技術を残していってほしい』と喜ばれるお施主さんの顔を見ると、疲れが吹き飛びます」
各地の和風建築を訪ね歩き、参考にすることも多い。貴重な琵琶湖の資源を無くさないために「ヨシ地の保全」にも力を注いでいる。
(取材・鋒山)
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