公益財団法人 湖国協会 理事 三十木 諭さん(大津市出身、東京都在住)
東京都内や近郊の大学に通う滋賀県出身の学生をサポートする学生寮「湖国寮(ここくりょう)」(東京都武蔵野市)。
60年の歴史があり、寮生活を送ったOBは延べ1500人を超える。
今から11年前、寮の建て物の耐震問題が持ち上がり、廃寮か再建かで議論となった。県の財政難もあり一時は実質廃寮状態となったが、卒業生を中心に再建運動が高まり、新寮の建設が決定。昨年3月、新しい建て物が完成した。10月27日(日)からは来年4月の入寮者の選考が始まる。寮を運営する湖国協会の最年少理事でOBでもある三十木諭(みそぎさとし)さんに話を聞いた。
マネジメントのために
【湖国協会役員メンバー】
前列中央が中西正一(なかにしまさかず)理事長
上段右から3人目が岩田守弘(いわたもりひろ)副理事長
三十木さんは1952年、大津市で生まれ、今年60歳。膳所高から慶応大法学部に進学、旧湖国寮から大学に通った。
卒業後は大手建設会社の清水建設に就職。定年退職後は企業の顧問をしながら湖国寮の理事を務めている。
1男1女、孫2人に恵まれながら、定年後も家族を地元の草津市に残して単身で寮に住んでいる。その理由を尋ねてみたら「学生寮は下宿や学生マンションと違います。単なるねぐらではなく、寮生活が充実するようにマネジメントをしていくことが大切なのです……」という。
人との接し方を学ぶ場
湖国寮恒例の「たこ焼きパーティー」
寮の部屋
この考えは、廃寮か再建かの厳しいやりとりの中で固めてきたものだ。
「寮生活は、人との接し方を学ぶ最高の場です。寮生活でコミュニケーション力を養い、たくましい人材になってほしい。私が寮時代に同室だった岩手大学の藤井克己学長も『この歳になってやっと寮の意義が分かってきた』と言っています」と目を輝かせる。
先輩、後輩や寮長、寮母との共同生活を通じて、家庭や大学では学べない社会性を自然に身につけることができる。それが、社会に出たときに生かされる。「勉強を上手くこなすだけでなく、コミュニケーション能力に優れたファイトのある人材に育ってほしい」と、話が熱をおびてきた。
可愛い子にこそ旅を
新寮の建設にともない、女子寮と身障者用の部屋が新設された。共用部分が多かった旧寮とは異なり、新寮は各室にバス、トイレ、冷暖房が完備され、共有部分には食堂、図書室、ピアノ室などが設けられている。
寮生が通う大学は国立、私立、理系、文系とさまざまだが、学生同士の交流は良好だという。いろいろなタイプの学生と出会うことができるのも寮生活の面白さだ。「可愛い子には旅をさせよと言いますが、昨今、子どもを手放そうとしない過保護な親の方に問題があるかもしれませんね」との言葉が印象的だった。
(取材・山田脩治)
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