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掲載日: 2013.10.16

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陶芸家 杉本 貞光さん(甲賀市在住・78歳)

「長次郎風黒茶碗(ちょうじろうふうくろちゃわん)」「光悦風赤茶碗(こうえつふうあかちゃわん)」「高麗の井戸茶碗(こうらいのいどちゃわん)」「織部茶碗(おりべちゃわん)」「信楽焼の蹲(うずくまる)」
杉本貞光(すぎもとさだみつ)さんの陶芸展には格調の高い作品がずらりと並び、見る人を圧倒する。陶芸作家として間もなく半世紀。一貫して求め続けてきたのは「時も人も超えた、わびさびの世界」。杉本さんの陶芸への姿勢は入賞を求めるためではなく、国宝級の名品すら超えようという志の高いものだ。その背景には、京都・大徳寺の立花大亀老師(たちばなだいきろうし)との出会いがあった。

立花大亀老師との出会い

黒楽茶盌

33歳のとき、杉本さんは信楽の古い壷に魅了され、陶芸の世界に足を踏み入れた。だが、当時は列島改造ブームの真っ最中。建設ラッシュのためビルの内装や外装のレリーフ制作などの仕事に追われていた。
39歳のとき、「面白い坊さんがいる」と知人に紹介され、京都・大徳寺の立花大亀老師を訪ねた。そして老師に言われた。
「美術館でたくさんの国宝や重要文化財を見ているだろう? あれをどう思う?“わびさび” の思想から生まれた美術品はたくさんあるだろう」
千利休(せんのりきゅう)などが活躍した時代の美意識である「わびさび」は、徹底的に無駄を省いた究極の美だ。季節でいえば秋、一日でいえば夕暮れだろうか?
「桃山時代に返りなさい」
老師に言われたこの一言で、目からうろこが落ちた杉本さん。目指すのは「わびさびの世界」だと決心した。そのときからレリーフ制作をきっぱりやめ、民芸風の作陶や現代陶芸からも手を引いた。
「地味で渋く、汚らしいのが『わびさび』ではありません。粋で品がよく、おおらかで柔らかい。これがわびさびです」と杉本さんは言う。

作家活動と決別

信楽蹲壺

立花大亀老師への師事を願い出た杉本さんは、老師から条件を二つ出された。
「作家活動をやめること」
「愚痴(ぐち)と弁解は言わないこと」
作家活動は己の個性を追究するもので、目標は展覧会で賞を取ること。「わびさび」とはかけ離れた世界だ。「確かに審査員はその道に詳しい。しかし、それはたった1人の目に過ぎない。何百年も時代を経て来た名品は、数え切れない人の目にさらされ、時代の変化に耐えて評価されている。つまり、『仏の目で選ばれているに近い』。審査員の目よりも仏の目、己の個性よりも普遍的な美、それが『わびさびの世界』だ」と老師に教えられたという。

邪念を捨てて

一言でわびさびと言っても「利休の黒茶碗」や「高麗の井戸茶碗」などさまざまな作風がある。一体どれを目指せばいいのか杉本さんは迷った。老師の答えは「全部やりなさい」だった。
以来、あらゆる名品を見るように努め、そこから学び、それに迫るよう努力した。むしろ迫る努力というより「超える努力」というべきかも知れない。
苦労したのは「土探し」。志野の「もぐさ土」と出合うまでには10年以上かかったという。納得のいく土を探し出し、土に聴く。「上手に作りたい、自分を表現したい」という邪念を捨て、土の持つ個性を引き出すことに全身全霊を注ぐのだという。
「わびさびの美に気が付いても、それが表現できるかどうかは、また別です。私にとっても永遠のテーマです」
(取材・越智田)

 

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