フルート奏者 中川 彩さん(高島市出身、東京都在住・25歳)
東日本大震災の被災地支援のためにチャリティーコンサートを開く音楽家は多い。一方で、演奏だけでなく被災地の中学校吹奏楽部員を継続的に指導することで被災者の子どもたちを癒やし、元気づけようと頑張っている音楽家がいる。高島市の出身で、東京を拠点に音楽活動をしているフルート奏者の中川彩(なかがわあや)さんだ。
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東日本大震災の被災地支援のためにチャリティーコンサートを開く音楽家は多い。一方で、演奏だけでなく被災地の中学校吹奏楽部員を継続的に指導することで被災者の子どもたちを癒やし、元気づけようと頑張っている音楽家がいる。高島市の出身で、東京を拠点に音楽活動をしているフルート奏者の中川彩(なかがわあや)さんだ。
きっかけは福島県伊達市からの依頼だった。
同市では被災した子どもたちが希望を持って生きていくために音楽の持つ力に着目。昨年から東日本大震災復興支援「吹奏楽きらめき事業」を始めた。
これは、伊達市内6中学校の吹奏楽部員が、東京藝術大学の学生から指導を受け、音楽の素晴らしさや奥深さを学びながら演奏によって地域の人たちを元気づけていこうとする試みだ。
同大学大学院修士課程に在籍し、学内でティーチング・アシスタントとしてフルートの実技指導をしていた中川さんはこのプロジェクトに即座に賛同、大学の管打楽器の仲間と年に3~4回、伊達市を訪れて指導・交流を重ねた。
「最初は、被災地の子どもたちにどのように接したら良いのか不安でした。でも、みんな思っていたよりも元気で、素直に話を聞いてくれました。その姿に接しているうちに、私自身もフルートを始めたころの新鮮な気持ちがよみがえってきて、逆に元気が湧いてきました」
生徒たちは練習熱心で、すぐに指導の成果が現れた。コンクールの成績も上昇。今年2月には1年間の集大成として「伊達ジュニアウインドオーケストラ・東京藝術大学ウインドオーケストラ合同演奏会」を開催した。
中川さんがフルート始めたのは小学1年生のとき。幼いころからぜんそくを患い、医者から肺活量を増やすためにフルートのレッスンを勧められたのがきっかけだった。
最初のうちは息が続かなかったが、フルートの哀愁を帯びた優しい音色と、指導を受けた古谷裕美子(ふるやゆみこ)先生の美しい舞台での姿に感動し、厳しい練習に耐えた。その結果、徐々に肺活量が増え、ぜんそくの発作もいつの間にか消えてしまったという。
これまで、全日本学生音楽コンクール(毎日新聞社主催)大阪大会中学の部1位、高校の部1位、びわ湖国際フルートコンクール高校生部門1位などを受賞している。
転機が訪れたのは高校在学中、平和堂財団芸術奨励賞を最年少で受賞したときのことだった。ほかの受賞者は演奏中にお客さんを楽しませる余裕があるのに、自分にはそれが全くないことに気が付いた。
「これではいけない」と反省、「上手な演奏」を心掛けると同時に「楽しい演奏」を心掛けるようになった。
今年5月に岐阜県で、バイオリン奏者の高岸卓人(たかぎしたくと)さん、ハープ奏者の大西怜奈(おおにしれいな)さんと東日本大震災復興支援チャリティーコンサートを開いた。
これに続いて来月9日(土)、大津市のしがぎんホールで「中川彩フルート・リサイタル」を開く。プログラムは没後50周年の「プーランクのフルート・ソナタ」や、悲しい恋の物語をもとにした「ライネッケのウンディーネ」など。
共演は、チェロの島根朋史(しまねともふみ)さん、ピアノの西村静香(にしむらしずか)さん。(取材・澤井)
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