フリーカメラマン・文化財写真家 寿福 滋さん(大津市在住・60歳)
36年間、フリーカメラマンとして滋賀の重要文化財、仏像、風景などを撮り続けてきた寿福滋(じゅふくしげる)さん。2011年度、滋賀県文化賞を受賞した。滋賀県観光情報のホームページにある「湖国百景フォト紀行」の寿福さんの写真は息をのむほど美しく、圧倒される。
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36年間、フリーカメラマンとして滋賀の重要文化財、仏像、風景などを撮り続けてきた寿福滋(じゅふくしげる)さん。2011年度、滋賀県文化賞を受賞した。滋賀県観光情報のホームページにある「湖国百景フォト紀行」の寿福さんの写真は息をのむほど美しく、圧倒される。
子どものころから歴史や遺跡に興味があった寿福さん。
高校生のとき、JR湖西線(当時国鉄)の建設工事に伴う遺跡調査で自宅周辺が発掘ラッシュとなり、発掘の現場でアルバイトをした。小さな土器を拾っただけでうれしさのあまりぞくぞくしたという。
「たとえば天智天皇の都跡。『自分が立っている所で、天智天皇がこれを使ったかも』と想像するだけで身震いしました」
そんなとき、文化財専門のカメラマン、森昭(もりあきら)さんと出会った。出土する文化財を見事な写真にしていく森さんの撮る写真からは、その時代の人の気持ちまで伝わってくるような気がした。「自分も遺跡専門の写真家になろう!」と決心し、高校を卒業後、森さんに弟子入りした。森さんの家に住み込み、横浜にある港北ニュータウンの広い現場に点々としている遺跡の撮影に携わった。現場の仕事を終えて帰った後も、夜遅くまで次の日の仕事の手伝いをすることもあった。
「体で覚えろ」「カメラマンに向いていないからやめろ」など、厳しく鍛えられたという。
森さんのもとで8年間勉強した後、30歳で故郷の大津に帰り、文化財専門のフリーカメラマンとして独立した。当時はバブル景気真っ盛り。琵琶湖総合開発に伴う遺跡発掘調査が県内各地で行われていたため、関係する仕事を昔の仲間から紹介してもらうことができた。
遺跡の写真を撮っているうちに、眼の前に広がる風景に大きな興味を持つようになった。
湖北地方の小谷城跡を撮影しているときは、城主の浅井長政や江姫が自分の横にいるような気がした。山を見ていると山の神が、湖を見ていると湖の神がいるような気がした。大自然の風景から、大きくて不思議な力を感じるようになった。
こうして遺跡、文化財、仏像などの撮影に加え、風景撮影にも力を入れ始めた。
寿福さんの風景撮影に対する思いは熱い。琵琶湖の大きさを感じられる場所で朝日を撮りたいと思い立ち、沖の白石に漁船で行き1人で夜を明かしたことがある。夜は真っ暗で恐ろしかったが、日の出とともに湖面がきらきらと輝き始めると、思わず手を合わせて拝んでいたという。
「住んでいた人」「眺めていた人」「使っていた人」など、風景にも遺跡にも必ず人の存在を感じるという寿福さん。
仏像を撮るときは住職や檀家の人、風景ならそこで働き、生活している地元の人がいるように、過去・現在・未来とつながる人の歴史があるという。
このつながりへの感動が作品づくりのエネルギーなのだろう。
「将来、自分の作品を見て懐かしんでくれる人がいることを信じて止みません」
(取材・鋒山)
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