美術作家 藤永 覚耶さん(大津市在住・30歳)
布に描かれた大小さまざまの点が溶け合い、鳥や森に見えてくる……。
アルコール染料を駆使した独自の手法で、不思議な世界を表現する藤永覚耶(ふじながかくや)さんの作品が話題になっている。
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布に描かれた大小さまざまの点が溶け合い、鳥や森に見えてくる……。
アルコール染料を駆使した独自の手法で、不思議な世界を表現する藤永覚耶(ふじながかくや)さんの作品が話題になっている。
父親の藤永覚誠(かくしょう)さんも画家。子どものころから絵は好きだったが、父親から褒められることはほとんどなかったという。
それが逆に藤永さんを絵の道に進ませ、自分の作風を切りひらくことになったとふり返る。
漫画も好きで、芸術大学のマンガ科に入ろうと思っていたが、あるとき、芸術大学の版画分野の卒業制作を見て、木版や銅版だけでなく写真、映像、シルクスクリーンなど幅広い表現方法があることを知り、版画の道へ進むことにした。
京都嵯峨芸術大学で版画と写真を学び、2006年に卒業した後、愛知県立芸術大学大学院油画専攻に進学。さまざまな分野の人と交流するうちに「言葉にできない感覚を空間の中で感じる絵画に表現していこう」という気持ちを固めていった。
初期の作品は点と写真を併用したものが多いが、意図や狙いがうまく伝わらないことも多く、自分の未熟さに悩んだ。
そこで、インクの濃さや溶剤、描く布の種類などを工夫し、インクをアルコールで溶かす独自の技法を見出した。
また、北海道でグループ展を開いたときは、平面の作品を天井からつるすなど、空間を取り込んだ表現が好評を得た。
藤永さんの作品は近くで見ると抽象的でよく分からないが、離れて見るとぼんやりと像が浮かんでくる。
「子どものころ、テレビを見ていて突然、画像が色の粒のかたまりに感じました。全体をぼんやり見ている場合と、一部分をしっかり見ている場合とでは見え方が違うのが不思議でした。森の中で、木のシルエットが見方によっては鳥に見えたりするように、具象と抽象を行き来しながら、一つのものが何にでもなり得る感覚を楽しんでみてください」
滋賀県に戻ってきたのは4年前。
それまでは愛知県を中心に創作活動をしていたが、2年前からは関西でも個展を開くようになり、これからはもっと発表の場を広げていきたいと考えている。
2011年に平和堂財団芸術奨励賞、13年に滋賀県次世代文化賞を受賞した。
現在は、京都嵯峨芸術大学の非常勤講師を勤め、長浜市の長行寺の副住職でもある。
「地元で賞をいただけて、大変うれしく思っています。これを機会に、地元のたくさんの方に作品を見て、体感していただければと思います」
3月29日の「びわ湖・アート・フェスティバル」では、5㍍近い大作を出展する予定だ。
(取材・澤井)
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