公益財団法人 江北図書館 理事長兼館長 冨田 光彦さん(長浜市在住・77歳)
100年以上の歴史を持つ湖国最古の「江北(こほく)図書館」は、全国でも珍しい私立の図書館だ。県内で戦前から続いている図書館は江北図書館をふくむ4館のみ。公的な支援も乏しい中で地域の知識の中心を担ってきた。 33年間無報酬で理事長兼館長を務めてきた冨田光彦(とみたてるひこ)さんは図書館の存続のために奮闘を続けている。
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100年以上の歴史を持つ湖国最古の「江北(こほく)図書館」は、全国でも珍しい私立の図書館だ。県内で戦前から続いている図書館は江北図書館をふくむ4館のみ。公的な支援も乏しい中で地域の知識の中心を担ってきた。 33年間無報酬で理事長兼館長を務めてきた冨田光彦(とみたてるひこ)さんは図書館の存続のために奮闘を続けている。
江北図書館は今から107年前の1907年、宿場町の雰囲気漂う木之本・旧北国街道沿いの伊香郡役所内に設立。75年にJR木ノ本駅前の2階建て洋館を譲り受けて移転し、今日に至る。 そのルーツは1902年、弁護士の杉野文彌(すぎのぶんや)氏が郷里の若者に勉学の機会を与えようと伊香郡余呉村(現長浜市)に設立した杉野文庫だ。 以来、設立者の高い志を受け継いだ多くの先覚者たちの努力に支えられ、滋賀県の図書館の中で最も長い歴史を刻んできた。 蔵書数は約4万9000冊。その中には貴重な図書や伊香相救社資料、旧伊香郡役所文書、明治の地籍図などの郷土史資料が多数含まれている。江北図書館は地域の人たちに本を読む場を提供する図書館本来のサービスと、貴重な史資料の保存活用という二つの事業を同時に担ってきた。
冨田さんが理事長兼館長に就任したのは44歳のとき。当時の理事長が亡くなり、冨田さんに理事長就任の要請があった。商社マンから転身し、滋賀大学で国際経営学を教え始めたばかりの冨田さんは就任を断わっていたが、「後継者がいないなら貴重な本を処分して解散せざるをえない」という声が出てきた。高い志を持って設立され守られてきた図書館の歴史を途絶えさせるのは忍ぶに堪えない―。 「貴重な本を無駄にしてもいいのか」 冨田さんは自己犠牲を覚悟で理事長兼館長を引き受けたという。 長引く低金利で基本財産の運用益はほとんどなく、伊香郡町村会からの支援も長浜市への合併で廃止されるなど、財政は厳しい。 築80年を経た建物の老朽化も進んでおり、台風のときなどは地域の人たちの協力を得て窓に板を張って雨風をしのいでいる。 一番の懸案は貴重な図書や資料の劣化をいかにくいとめるかだが、財政難のために限界に達している状態だという。
こんな神経を使う日々を過ごす一方で、息抜きに第九の合唱に参加したり、余呉湖の周りや田園地帯を散歩するのだそうだ。そして、また明日に向かって歩み出す元気を得るのだという。 「33年間理事長兼館長を務めてきて今しなければならないと思うことは二つ。第一に、財政が極めて厳しく、建物が老朽化する中で、長年守り引き継いできた貴重史資料を安全に管理し有効に活用してくれる公的機関にこれを移すこと。もう一つは貴重な資料保存・活用の負担から解放され、地域住民が満足できる図書館サービスを提供すること。この二つを実現し、新たな明日を目指すことこそが、今まで図書館を守ってこられた先覚者や寄付をくださった篤志家の志に報いる道であり、私に課せられた使命、夢でもあります」 (取材・鋒山)
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