布花作家 武野 美和子さん(彦根市在住・68歳)
布を使って本物そっくりの花を表現するアート「布花」。彦根市の布花作家・武野美和子(たけのみわこ)さんは「自然に逆らうのはルール違反」を信条に、派手さを求めず徹底して自然の花を表現し、多くの人を魅了している。
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布を使って本物そっくりの花を表現するアート「布花」。彦根市の布花作家・武野美和子(たけのみわこ)さんは「自然に逆らうのはルール違反」を信条に、派手さを求めず徹底して自然の花を表現し、多くの人を魅了している。
武野さんが布花を始めたのは37年前。ママ友らと始めた習いごとで、教えてもらった通りに作るだけで満足していた。 当時は大きく派手なアレンジが主流だったが、作った花が家中に溜まっていくと家の中が落ち着かなくなってきた。「小さなスペースでも飾れる、心の落ち着く布花はないのか」。そんな思いが強くなり、花のアレンジについて勉強しようと彦根市のフラワーデザイナー・河合透(かわいとおる)さんに師事した。 1998年、ドイツへの研修に参加したときのこと。ドイツでは植物本来の姿と性質を理解したうえでデザインすることを大切にしていて「自然に逆らうのはルール違反」と教えられた。 「研修は3000坪の敷地から好きな花を摘むところから始まります。むやみに花を切らず、自然のままの姿を生かすドイツ流のアレンジが自分の求めているものだと感じました」
ドイツから帰ると、少し乾いた哀愁漂う花の色を好んで使うようになった。本物の花を分解して3~4日置くと乾燥して落ち着いた色になる。この色が心を落ち着かせることに気が付いた。 さらに、花だけを強調するのではなく周囲に草や小さな花を使い、粘土人形の妖精を添えたりして人の心を和ませるアレンジも心掛けるようになった。 花を飾る器も思い通りのものが欲しくなり、陶芸教室に通って自分で作ったこともある。 自然のままの姿を生かすために、本物の花を分解して花びら、がく、葉の型紙を取る。花が手に入らなかったときは、園芸店で球根を買い、花を育てて型紙を取ることもある。 使う布地は30種類以上。素材の風合いで花の表情が変わるので、同じシルクでもオーガンジー、サテン、羽二重など、風合いや薄さが異なる生地を組み合わせることで本物の質感に近付けていく。花びらの丸みや反りはコテを使って表現。花びらの数は多いものだと50~100枚にもなる。12種類の染料を調合して色を作り出すが、複雑な色の混じり加減を表現するのが難しい。納得いく色が出せるようになるまで20年近くかかったという。
90年から2年に1度、作品展を開いている。いつのころからか作品は「癒しの布花」と呼ばれるようになった。 2001年に発生したアメリカ同時多発テロに衝撃を受け、アメリカで作品展を開きたいと思った。「癒しの布花」で少しでも現地の人を勇気づけたいと思ったからだ。 3年後にペンシルベニア州で開いた作品展では、世界貿易センタービルを模したランプの周囲に布花と天使を飾った作品を展示。売り上げは全額現地のがんの協会に寄付した。 創作の傍ら、布花教室も20年以上続けている。作った後のことも考え、ブーケばかりでなく、リースやタペストリー、ボードなど小さなスペースや壁に飾れるものが多い。 「布花は自分の一部。37年間休んだことがありません。人に喜んでもらえることが活力源です。ちゃんとした技術がないと満足させられませんので、今でも日々勉強ですね」 (取材・福本)
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