西川 満子さん(近江八幡市在住)
実母の横井澪子(よこいみおこ)さんが生前詠んだ短歌と俳画をまとめた遺歌集「さくら草」を出版した西川満子(みつこ)さん。澪子さんが一昨年90歳で亡くなるまで約40年間にわたって書き綴(つづ)った短歌集で、日常生活の中での思いや老後を最後まで生き生きと過ごしてきた様子が爽(さわ)やかに伝わってくる秀作だ。
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実母の横井澪子(よこいみおこ)さんが生前詠んだ短歌と俳画をまとめた遺歌集「さくら草」を出版した西川満子(みつこ)さん。澪子さんが一昨年90歳で亡くなるまで約40年間にわたって書き綴(つづ)った短歌集で、日常生活の中での思いや老後を最後まで生き生きと過ごしてきた様子が爽(さわ)やかに伝わってくる秀作だ。
西川さんは一昨年90歳で亡くなった母の澪子さんが詠んだ短歌174首と俳画36点を本にするため、「構成」「歌選び」「写真整理」などに約1年の歳月を費やしこのほど完成させた。
「母が存命中に歌集を出すことを勧めましたが控えめな人で、『自分の作った歌なんか恥ずかしくて世間に出せない』と言っておりました。母が“短歌を詠む”ことを心の拠り所として生きてきた証しとして必ず本にしたい。それをするのは一人っ子の使命感だと思ったからです。」
二つある中表紙の題字は澪子さんの二人の孫娘にそれぞれ書いてもらった。女学校時代の写真や家族写真なども巻末に掲載したことで、家族はもちろん友人知人との絆が一層深まった。
澪子さんは女学校のときから短歌に興味を持ち、40歳のとき「八幡短歌会」に入会。何気ない日常の風景や心の内を短歌に詠んできた。しかし運命のいたずらで、あと数カ月で娘の満子さんが嫁ぐと言う時、これを待たずに夫が他界(享年54歳)。一人になったショックから歌が詠めなくなってしまった。
しかし2年後に孫がめでたく誕生し、その喜びを歌に詠みたいという気持ちが沸々と湧き上がり短歌を再開。孫の世話をしながら図書館(近江八幡市新町の旧図書館)の児童室に約10年間勤めたり、図書館に来る子どもたちからも元気をもらったりしながら過ごしてきた。
65歳のときには老人会で俳画を習い始め、これを機に習字、コーラスなども学び、市の文化祭でコーラスに出演したこともあった。
「母はおだやかな人でしたが、どこか凛(りん)としたところがあり、チャレンジ精神も旺盛でした。周りの者が一人暮らしは淋しかろうと心配しましたが、何かにつけて楽しみを見つけ元気に過ごして来ました」と西川さんは話す。
西川さんは本の題名に苦心したが、澪子さんが花をテーマに歌を多く詠んできたので、題名は花の名前にしようと決めた。ひ孫が生まれたとき澪子さんが詠んだ、
ミレニアムベビーの
曾孫(ひまご)生まれたり
さくら草ひらく 明るき朝に
と言う歌をヒントに「さくら草」と命名。「さくら草」はカトレアやひまわりの様な派手な花ではなく、春先に淡いピンクの花を付けるので澪子さんのイメージにピッタリ合っていると思ったという。遺歌集は友人たちから、「感動した」「心打たれた」などといった手紙が舞い込み、反響が大きかった。
「本にして皆さんに披露することで良い供養になりました。出来あがって真っ先に仏壇に供えましたら、とめどもなく涙がこぼれて来ました。母の一人暮らしを一緒に支えて来てくれた夫に感謝しつつ、私もこれからもいろいろな趣味を持ちながら、母のように生き生きと毎日を過ごしていきたいと思っています」
(取材:2016年9月 鋒山)
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