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幻の梨を作り続けて16年 美味しさの秘訣は樹上完熟

掲載日: 2019.08.9

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彦根梨生産組合 
組合長 林沼 隆(はやしぬま たかし)さん(彦根市在住)

彦根梨は甘さと瑞々しさ、出荷量の少なさから幻の梨といわれ、毎年最盛期には彦根梨を求めて早朝から直売所に行列ができるほどの賑わいをみせる。林沼さんは鉄道会社を定年退職後、梨作りを始めたユニークな経歴を持つ。15aの土地から約14,000個の彦根梨を作りJA東びわこに出荷している。

干拓地を活かす

荒神山の麓に広がる梨農園

標高263mの荒神山の麓に広がる約10haの梨農園は、1961(昭和36)年から始まった曽根沼(そねぬま)干拓事業によって生まれた土地で、当初は米や麦、大豆などの農作物を約20軒の農家が集まって作っていた。もっと収益が見込める農作物はないかと模索していた矢先、団地化して農地転作すると国や県から補助金が下りる話が組合に舞い込んできた。
琵琶湖から吹く風と豊富な地下水、寒暖差といった曽根沼の風土は梨作りに向いていると判断。1981(昭和56)年、田んぼだった土地に苗木の植樹が始まった。

経験者の話に耳を傾ける

収穫を待つ林沼さんの梨園

梨作りの経験がなかった林沼さん。たまたま小作の権利を持っていた親戚の人から「梨作りをしてみないか」と話を持ちかけられ、以前から関心のあった「農業」の世界に飛び込んだ。県の技術員の指導を受けたり、経験者の話や作業の様子を毎日見聞きしたりして、植樹から4年目には収穫できるまでになった。
夜明け前からの収穫や収穫後のお礼肥、有機肥料などを入れた土作り、数カ月間に及ぶ剪定作業などなど、体力がないと続かない農作業であることを実感した。

こだわりの完熟収穫

彦根梨の特徴は、樹上で完熟させてから収穫することで高い糖度と梨本来の旨みを引き出していることだ。収穫してから3日ほどが賞味期間なので、販売所も彦根周辺と限られたJA店舗となる。組合員から「完熟前に収穫して日持ちを良くしてはどうか」といった意見も出るが、「先人たちの努力によってブランド化された彦根梨のコンセプトを曲げるわけにはいかない」と、林沼さんは樹上完熟にこだわる。
流通する彦根梨はすべてJA東びわこ選果場で光センサーに通し、糖度や内部の傷みの有無、姿かたちなどを検査して、糖度12度以上のものだけがA品となって箱入りで販売される。

更なる高みをめざして

彦根梨の約8割を占める「幸水」

毎月1回、組合員と県の指導員、JA東びわこの担当者が集まって勉強会を開く。担い手の確保や糖度を高める工夫、増産に向けての方策など、直面するさまざまな課題について協議が行われるが、若い人に梨作りの魅力を感じてもらえる情報発信をいかにしていくかが直近の課題だという。
2mほどの高さの枝に実をつける梨の手入れは、収穫期は勿論、年間を通じて上を向いて行う作業のため首への負担が大きい。しかし林沼さんは「健康で仕事ができることが何より幸せ。箱入り梨を少しでもたくさん作れるよう、研究努力をしていきたい」と胸を張る。(取材・髙山)

●お問い合せ
東びわこ農業協同組合
果樹工房
TEL:0749-43-4174

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