「青花紙」の製作技術を絶やさない!
保存、継承に向けて情熱注ぐ【 アーカイブ 2020年8月取材 】
草津市立草津宿街道交流館
学芸員 岡田 裕美(おかだ ゆみ)さん(草津市在住)
草津市の市の花「アオバナ」の花びらの絞り汁を和紙に染みこませて作る「青花紙(あおばながみ)」。草津宿街道交流館学芸員の岡田裕美さんは、その製作技術の保存・継承活動をサポートしている。「青花紙」は主に友禅染の下絵用の絵具などとして江戸時代から用いられ、最盛期には約500軒の農家が栽培していたが、現在は1軒のみとなった。岡田さんは一昨年から「あおばな紙担い手セミナー」を開講し、草津市ならではの伝統技術が絶えないよう尽力している。
青花紙作りが存亡の危機に
摘み取ったアオバナ
岡田さんは広島県出身。関西学院大学大学院で民俗学を学び、2015年草津市の学芸員に採用された。翌年、同館で開催した青花紙に関するテーマ展「草津市・栗東市連携展示 KURITA BLUE」の準備で、青花紙と初めて出合った。アオバナは7月初旬から約1ヶ月が開花期。3軒の生産農家を訪ねたが、70代から80代の高齢者が炎天下で作業している姿に驚いた。毎朝6時ころから昼近くまで花を摘み、摘み取った花を手で絞ったあと絞り汁を刷毛で和紙に塗って乾かす。塗りと天日干しを繰り返し、130グラムの和紙が400グラムになるまで何度も塗り重ねていく。青花紙は水で濡らすと色素が出てくるので、それを筆につけて下絵を描く。青花紙を使う友禅染の職人が「繊細な細い線を一筆で長く描くが、化学染料は何回も継ぎ足さないと色がもたない。発色が良い青花紙の青色は仕事のモチベーションにつながる」と褒めてくれたこともある。
「現在生産農家の技術を継承する人がいません。人間国宝の加賀友禅の作家も青花紙を愛用しており、需要はあるのにこのままでは伝統技術が廃れてしまうのではないか、と危機感を覚えました」
継承者を育てるセミナーを開講
絞り汁を刷毛で和紙に塗る
2016年、草津市と東京文化財研究所が共同で青花紙の製作技術を記録保存することになり、3年間調査に参加した。当時3軒あった農家の青花紙作りの手順をすべて映像に残したが、技術が途絶えたあとに映像だけ見て復活させるのは難しいと思った。
岡田さんは今のうちに技術の継承をしなければと考え、青花紙の製作技術を学ぶ講座「あおばな紙担い手セミナー」を2018年開講した。「農家の技を見て一緒に作業したり、県立湖南農業高校の実習用アオバナ畑で学生と一緒に摘み取ったりして青花紙を作りました。現在も昔ながらの伝統技術を学びたい人が継続的に参加しています」
夢は青花紙のテーマ展
中川さんの指導を受ける岡田さん
現在アオバナを生産する農家は中川正雄さん(90)だけとなった。岡田さんは、夏場に炎天下で作業する中川さんを週1、2回手伝う。いずれ人事異動があっても何かの形で青花紙作りの継承に関わっていきたいと話す。「セミナーの参加者で技術が受け継がれ毎年青花紙が一定数できるようになってほしい。農家で作っていた青花紙を皆で分業すれば負担は軽くなると思います。私はそれを全力でサポートしたいです。中川さんや地域の人たち、参加者などと触れ合い、実際の声を聞きながらいつかテーマ展を開きたいです。そしてその時、技術が継承されていることが報告できたら嬉しいです」
(取材:鋒山)
●お問い合わせ
草津市立草津宿街道交流館
TEL:077-567-0030
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