ビリヤード場のマスターから
独学で社会保険労務士の道へ
特定社会保険労務士・社会保険労務士
浅井 貴博(あさい たかひろ)さん(大津市在住・62歳)
社会保険労務士は、障害年金や事故などにより発生する労災請求、遺族年金、健康保険の傷病手当金申請などの代行をする国家資格。
浅井貴博さんはスポーツ用品販売業やビリヤード場のマスターの経験を経て、独学で合格率約6%の社会保険労務士の資格を取得し、労使間の争いに介入できる特定社会保険労務士の資格も取得している。
資格で自分の価値を売りたい
「小さいころは内向的でごく平凡な人間でした。たくさんの人との関わりがあって今の自分があります。ありがたいことです」と浅井さん。
大学時代は勉強よりも部活の山登りに夢中になったり、ビリヤード場やスポーツ用品店のアルバイトに明け暮れたりしていた。24歳のときスポーツ用品店に就職、結婚もした。ところが1年足らずで会社は倒産してしまう。
大量の在庫を自分で売ろうと決意し1984(昭和59)年、母親がかつて商売をしていた場所に浅井スポーツ店を開業した。段ボールを担いでダンス教室に行きレオタードやシューズを売ったり、テニスの試合会場でラケットのガット張りをしたりもした。しかし経営は厳しく3年後、店舗の2階を改装して当時流行っていたビリヤード場を始めてみると大盛況。
スポーツ店との並行業務だったので睡眠時間が一日数時間という日が何日も続いた。「待ち時間が長くて客から怒られたり、金がなかなか回収できなかったりなど色々ありましたが、朝から晩までたくさんの人に出会えたことが今の仕事に生かされています」
しかしビリヤードのブームは長くは続かず、スポーツ用品店も廃業状態に陥った。そんなときふと大学時代に叔父が、社会保険労務士の話しをしていたことを思い出した。
「これからは物を売ったり場所を提供したりする仕事ではなく、資格を取って自分の価値を売りたいと思いました」
テキストをすべて暗記
午前中は妻の実家の商売を手伝い、午後からはビリヤード場の店番をしながら社会保険労務士の資格を取るための勉強を始めた。32歳の時だった。思えば親が大学に行けと言ったから行っただけで、大学の授業はあまり好きでなかった。
この時人生で初めて自分から勉強しようと思った。「合格率は関係ない。世の中には受かる人と受からない人の二択50パーセントだ」と開き直った。受験用テキスト十数冊を購入し、全部覚えるためにひたすらボールペンで紙に書き続けた。自分の知らないことばかりだったが、知識が増えていくのが楽しかった。
隣のおばちゃんに年金について教えてあげたり、ビリヤードの常連客に労災の特別加入や失業保険のことを教えたりもした。二度受験に失敗した後の1995(平成7)年、35歳で合格した。
「身体障害者の等級表をまるごと覚え、テキストの何ページに何が書いてあるかわかるほど暗記しました。苦しい思いをした時間は刻まれて思い出になりました。平凡に暮らしていたら思い出せない期間だったと思います」
地域の困っている人をサポート
大津市に事務所を開所して26年。今まで関わった交通事故の事案処理は6000件を超える。
「ご主人を交通事故で亡くし、電話にも自宅に行っても一切出てくれない方がおられました。何度も自宅を訪れたことで次第に気持ちが和らぎ手続きのお手伝いができました。しばらくの間暑中見舞いや年賀状で交流できて嬉しかったです。電子申請が進む世の中ですが、人は人との出会いで生きていくもの。自治会で法令の勉強会や相談会を開くなど、地域の人と密接に関わりを持って困っている人をサポートしていきたいです」
●お問い合わせ
浅井貴博社会保険労務士事務所
滋賀県大津市唐橋町7-15
TEL:077-537-1656
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